ノンフィクション&随筆
わたしは言語学を学んだこともなければ、日本語を研究する趣味もありません。しかし、三浦しをんさんが国語辞典編集者の地道で味わい深い喜怒哀楽を描いた小説「舟を編む」などは、心底楽しみながら読みました。<ことば>というものに少し、興味をそそられ…
「絶望読書」(頭木弘樹=かしらぎ・ひろき=、河出文庫)とは何とも、意表を突いたタイトルです。何なのだ、これは?。つい手にし、読まねばなるまい、でした。 簡単に言えば、お勧め本や映画、落語、テレビドラマを紹介したガイドブックです。ただし心底打…
百田尚樹さんという小説家による歴史本・日本通史が「日本国紀」(幻冬舎文庫、上下巻)です。百田さんを知る人がまず思い浮かべるのは、「永遠の0」や「海賊と呼ばれた男」(本屋大賞)のはず。2作ともとても面白い小説で、一気読みした人は多いと思います…
本について書かれた美しい本。 文春文庫の新刊「モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」(内田洋子)を簡潔に表すなら、わたしにはこの言葉以外にありません。もちろん「美しい」のは本の造りではなく、書いてある中身です。そして歯切れのいい文章も…
慶応4年(=明治元年、1868)3月14日、京から攻め上がってきた官軍の大将・西郷隆盛と、幕府を代表する勝海舟が会談し、江戸城を明け渡すことで合意します。大都市江戸が戦火に焼かれる悲劇を避けた無血開城として、NHK大河ドラマなどでもハイライトになる歴…
<縄文顔>と<弥生顔>という、ちまたの分類があります。縄文=ソース顔、弥生=しょうゆ顔、と言い換えてもいいでしょう。この分類、なかなか遺伝子的に日本人の成り立ちを言い当てていると思います。 などど、知ったふうに書いたのは、遺伝子解析が切り拓…
時間をかけて、少々カタい本を読んでいました。「戦争の日本中世史 『下剋上』は本当にあったのか」(呉座勇一、新潮新書)は、鎌倉時代の蒙古襲来から始まり、南北朝を経た戦国前夜まで、武士階級を軸にして日本における<中世>の実像に迫った論考です。 …
歴史学者で考古学者の松木武彦さんが、駅弁について書いたエッセーがあります。松木さん曰く。昔、ディーゼル急行の固い座席で割り箸を使った高松駅の駅弁は、どうしてあんなに旨かったのか?。 言われてみれば確かに、冷えた幕の内弁当がレストランで出てき…
2021年6月、現代を代表するジャーナリスト、立花隆さんの訃報が伝えられました。1974年の「文藝春秋」に掲載された2本の記事、立花さんの「田中角栄研究ーその金脈と人脈」と、児玉隆也さんの「淋しき越山会の女王」が、金権政治で権力をふるう内閣総理大臣…
どうにも<博物館>というやつは、地味です。 美術館は、やれフェルメールだ、印象派だ!と、日本人のキラーコンテンツを引っぱってきて企画展をやれば、大都会では長蛇の列。10年近く前、上野公園の某美術館でフェルメールの少女の小品見るために、殺到した…
<死>とは何か、人は決して知ることはできません。死んでから甦って語ることがない以上、つねに<死>は生きている人の中にある、さまざまなイメージです。 <死>について語るとは、<死>を前にした<生>の在り方をつづることになります。辞世の句、遺作…
最初に告白しておけば、25年前にひっそり書店に並んでいたこの本、わたしは1ページ目から最後までを、通読したことはありません。 買った当初は目次で全体構成を眺め(庭に関するエッセイ、詩、書簡のような断片、掌編小説、水彩画などが集められている)、…
二篇のエッセイが、妙に響きあって、心に残りました。どちらも、新聞に掲載された短い原稿です。 まず2020年5月25日、朝日新聞に掲載された青来有一さん(作家)の「暖簾は語る」。 年に数回は行くという、長崎県の温泉地の居酒屋の話です。 八十代の元気な…
東京の古書店をすみからすみまで追究する究極のマニュアル本ついに完成! と、帯にうたわれているのが「東京古書店グラフィティ」(池谷伊佐夫、東京書籍、絶版)です。1996年に出た本なので、すでに四半世紀・25年前。今も、古書店巡りのガイドブックになる…
10年前の2011年3月11日、午後2時46分18.1秒。この瞬間を境に、多くの人生はそれ「以前」と「以後」に決定的に分断されました。被災者でないわたしでさえ、めまいのような横揺れに驚いたあの瞬間からの数日、数週間、そして1年は忘れられません。 東日本大震…
「やめられない、とまらない〜」という、ビールと大変相性のいいスナック菓子の古典的コピーが、この本を読んで脳裏によみがえりました。頃よく日も暮れたので、さっそく飲み始めましたが、手元にリアル<かっぱえびせん>がないのは...痛恨の極み。 2016年…
10代の終わりから20代始めは、ある年齢に達した多くの人にとって、特別懐かしい時期ではないでしょうか。子供ではないけれど、まだ社会に踏み出していない大学時代。生活をぎりぎりまで切り詰め、わたしを東京の大学に出してくれた両親に今は感謝しかありま…
随筆という文学ジャンルの起源は、清少納言の「枕草子」だそうです。国語辞典によれば「自己の見聞・体験・感想などを、筆に任せて自由な形式で書いた文章」となります。 随想、エッセーとも言い、呼び名にこだわることに意味はない気もしますが、谷崎潤一郎…
著者・関本剛(せきもと・ごう)さんは2019年の昨年、肺がんと分かった時点で43歳でした。既に脳に深刻な遠隔転移があり、進行度はステージ4。そして関本さんは、神戸市にある緩和ケアクリニックの院長として数多くのがん患者を看取った専門医でもあります。…
昭和62(1987)年にベストセラーになった「ハラスのいた日々」(中野孝次、文藝春秋)を、30数年ぶりに再読しました。中野さんはドイツ文学者でエッセイスト、小説家で2004年没。 ハラスと名付けた柴犬と暮らした13年間を綴ったこの作品は、刊行翌年に新田次…
書店の平積み本を眺めていて、タイトルにひかれ、しかも著者は小説も書く気鋭の社会学者(歴史学者ではない)ということで手にしたのが「絶対に挫折しない日本史」(古市憲寿、新潮新書)です。 幸い、挫折せずにすみました^^;。歴史を通しての、ユニーク…
高校生がスマホを持っているから、化粧をして笑っているから、貧しくはないー。少なくとも、貧しくは見えない。しかし、本当はどうなのか。 <貧困>に結び付けて思い浮かぶイメージとは、どんなものでしょうか。ごみ山を漁って生活するアジアのどこかの国の…
死を語るとは、いのちを語ること。 かつて医師や看護師、患者のみなさんから聞いた多くの言葉、その核心を要約すればこのようになります。長く取材者としてキャリアをつないできたわたしは、二度、がんと終末期医療をテーマにしました。 最初は1980年代終盤…
こんな想像を巡らせたことはありませんか。もし自分が卑弥呼の時代にタイムスリップしたら、どれくらい会話が通じるのだろう?。あるいは、縄文時代のある集落にだったら。そこではどんな日本語<ヤマトコトバ>が話されていて、例えば英語なんかよりはスム…
小説・つまりフィクションは、事実を超えることができないーと感じるのは、「聖の青春」(大崎善生、角川文庫 第13回新潮学芸賞受賞)のような作品を読んだときです。幼いころから重い腎臓病を宿命として背負いながら、棋士という厳しい勝負の世界に生き、最…
本来なら日本はいまごろ、7月24日(金曜日)に開幕する東京五輪を目前にして、日に日に空気がたかぶっているはずでした。安倍政権にとっては、昨年の消費増税による景気低迷を一気に消し去る、盤石のロードマップでもありました。ところが2020年は日本にとっ…
ひと昔前まで、脚本家や小説家はどんなところで、どんなふうにして原稿を書いたのでしょうか。「神楽坂ホン書き旅館」(黒川鍾信、NHK出版)を再読して、不覚にもところどころ涙しそうになりました。昭和の物書きたちと、彼らを支えた無名の人びとの息遣いが…
幻冬舎代表取締役社長、そしてカリスマ編集者である見城徹さんが、対談を通して自らを語っているのが「異端者の快楽」(幻冬舎文庫)です。見城徹という一人の編集者・人間がくっきり浮かび上がるとともに、対談相手の中上健次、石原慎太郎、さだまさしさん…
読み終えていない本について書くのはどうなのかーと思いますが、幾つもはっとさせられる文章が出てきて、しかも途中から飲みながら読んでいるので、気づけばほろ酔い状態、となると読む集中力は途切れがちで、むしろ気ままに自分の思いを書く方が適当なのだ…
最近は<巣ごもり>気味なので、このさい難破船のごとき部屋の本を整理しようと思い立ったのが昨日。開始15分で早くもどう収拾をつけるか茫然とし始め、手にとった昔の本をちょっと開いてみたら、現実逃避という悪癖が即座に作動して読みふけってしまいまし…

