ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

「レダと白鳥」〜レオナルド・ダ・ヴィンチの失われた傑作

空き部屋になった2階の子供部屋に、春から画材を運び上げ、画集など絵画関連の書籍もすべて移してアトリエにしました。いま、とてもお気に入りの空間です。 絵筆を持つと集中力が必要で、30分前後描くと限界に達するので、中入りの休憩を3、40分。その繰り返…

Curry カレー 〜食の記憶・file5

昭和は子供から大人まで、日本の国民食の一つがカレーライスでした。わが家では母が、わたしの好みに合わせて「ジャワカレー」(ハウス食品)の中辛を作ってくれた。 なにしろ田舎。フレンチやイタリアンは当然、和食という高級料理などつゆ知らず、カレーと…

壮絶な記録文学 300余の人柱 〜「高熱隧道」吉村 昭

壮絶な記録文学です。北アルプスの黒部峡谷は、峻厳な地形や豪雪が人の侵入を拒み続けてきた秘境。その峡谷に水力発電のダムを建設するため、人や資材を運ぶ隧道(トンネル)の掘削が始まりました。 ところが地下火山の影響で、掘り進むと岩盤温度は160度を…

食い道楽 日の丸お粥に中華そば 〜食の記憶・file4

ふと、ある食べ物が思い浮かび、無性に食べたくなる...こと、ありませんか? 若いころは洋食に中華、和食、創作料理、B級グルメまで、いろいろ情報を見て食べくなったものです。思い浮かべるだけで、口にじわっと唾がたまる感じ。体が、食物を求めていたのだ…

届かない恋心 切ない大人の童話 〜「やさしい訴え」小川洋子

「やさしい訴え」(小川洋子、文春文庫)を読みながら、読み終えて、しばし考えました。この小説について、なにか書くべきなのか...。以前、このブログである恋愛小説を取り上げたとき、以下の趣旨のことを書きました。 いい恋愛小説はただ共感できるか否か…

極限状態、冷徹な人間観察 〜「野火」大岡昇平

ウクライナ、パレスチナのガザ地区など、世界のあちこちで戦争が絶えません。有史以来、国と国は武器を執って争い、21世紀になっても変わることがない。 幸い、日本はしばらく戦争に直面していないけれど、「戦後」という言葉が過去になったわけではありませ…

思えば遠くへ来たもんだ

たまたまSNSと、とあるブログで相次ぎ、手塚治虫が1970年に描いた同じ画像を見ました。人の一生を男女別の図にしていて、なんと10歳過ぎまでと50歳以降は、男も女もないことになってます。 手塚センセイ、多少のアイロニーを込めて描いたと想像しますが、半…