ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

謎解きは運命の軌跡 〜「草花たちの静かな誓い」宮本輝

「遺体はどうするんです?」 伊豆・修禅寺温泉の高級旅館で急死した63歳の女性。遺体と遺品を引き取りに来た甥の青年、弦矢(げんや)を、五十過ぎの警官が地味な警察車に乗せて案内し、そう問いかけます。太陽の光が優しい、4月半ばの若葉の季節。一人の女…

リアルという名の<凄み> 〜「写実絵画の新世紀」別冊太陽

ホキ美術館(千葉県)に代表される現代日本の新しい写実絵画について、自分なりに内面的な整理をしたいと思いながら、これまで放置してきました。たまたま1冊の別冊太陽を衝動買いしたことで、ちょっと考えてみることに。 近年人気が高い写実絵画とは何か。…

美しい五月 清水哲男 〜雑文

安東次男さんの「花づとめ」という本について、昨日書いたばかりですが、無性にわたしも同じことをやってみたくなりました。もっともわたしの場合、取り上げるのは短歌や俳句ではなくて、短い詩についての<解>です。 読みの深さに関して、「花づとめ」に遠…

詩の心を追いかけた小品集 〜「花づとめ」安東次男

昨日の陽気と打って変わって、今日は花冷え。日が暮れてから、夏の花の一鉢を屋内に入れました。この時季、まだ日によっては暖房がありがたい。今満開の桜は、寒いほど日持ちするのでしょうけれど。 「花づとめ」(安東次男、講談社文芸文庫)は、万葉集から…

本と青空と桜 新型コロナ禍のさなかに 〜雑文

庭に樹齢30年余りのソメイヨシノがあります。今日は晴れて暖かく、見上げれば青空を背景に三分咲き。蕾も膨らんでいるので、枝先まで全体が桜色に染まっています。満開に咲き誇るのは週明けのころでしょう。 移植したときは1メートルほどの幼木でしたが、わ…

ノスタルジックな日本 〜「新版画作品集 なつかしい風景への旅」西山純子

川瀬巴水 <目黒不動堂> 昭和6(1931)年 日本を代表する美術品の一つが、浮世絵であることは多くの人が認めるところでしょう。北斎、広重、歌麿....。もっとも、江戸時代のリアルタイムでは風景画や美人図、役者絵と言った庶民が楽しむものだったわけです…

古池や とは そもそも 〜松尾芭蕉、安東次男

昨年からしばしば俳句を拾い読みしています。実はそれほど興味はないし、熱心に読んだこともなかったのですが、身構えずに3行の<短詩>と割り切れば、そこそこ楽しめます。どうしてまた俳句なんぞを?と問われれば、野暮な必要に迫られてなのですが。そこ…