ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

生きる人間のリアル 驚くべき<真実> 〜「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

「小説」と「文学」の違いは何なのでしょう。文学の1ジャンルが小説である、というのは分かりやすい解釈ですが、読者として作品に接する皮膚感覚で言えば、いい小説が必ずしも優れた文学ではありません。つい、おかしなことから書き始めてしまいました。 「…

七夕とアルゲリッチ 〜雑文

7月7日、七夕。外から聞こえてくるのは、激しい雨の音ばかり。九州では洪水被害が甚大で、織姫と彦星が出会う天の川は厚い雲の向こうです。七夕伝説は中国から伝わり、古代からあったお祭りでした。 だから7月7日というのは本来は旧暦の日付で、明治になって…

我、CDプレーヤーを物色す 〜雑文

引き受けた仕事が進まず、本が読めないと前回の稿でぼやいたばかりですが、今度はCDプレーヤーが壊れました。あー、最悪!。在宅ワークなので、昔買ったステレオ・コンポでCDを流しながら、胃袋には何杯もコーヒーを流し込みつつ、仕事をするのが習慣になっ…

タマネギを炒める 〜雑文

このところ、腰を据えて本を読む時間がありません。ある長い原稿のアンカー(最終的な編集、点検役)を頼まれて、片手間ではできないと分かりながら断りきれなかったのです。原稿用紙に換算すると300枚ほど。やはり一筋縄ではいきません。まだ1、2週間はかか…

雨を見上げてそのまま 唇が欲し 〜「サラダ記念日」俵万智

おいおい、なんで今ごろ「サラダ記念日」(俵万智、河出書房新社)なんだよ。と、わたしがこの稿のタイトルを見たら思うでしょう。いや、若い世代はそもそもこの本を知らなくて、新作のライトな恋愛小説か何かだと思うのかも。 小説ではなくて、歌集です。舞…

ホタル狩り 〜雑文

梅雨に入り、ホタルが舞い始めました。さすがに近所で見ることができる人はごく少ないにしても、探せば結構あちこちに観賞スポットがあって、わたしが暮らす街は車で30分も走れば行けるのです。東京、大阪のような都市部にお住まいの方は、そうもいかないの…

老いを描いて容赦なく 〜「家族じまい」桜木紫乃

<老い>や<死>と、どのように向き合うか。そもそも、人は覚悟を決めてから老いるものではなく、生きることに追われているうち、気づいた時には既に、老いに伴うさまざまな現実が降りかかっているのでしょう。 普通の人間にとって、飛び抜けた成功や栄光は…