ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

ノンフィクション

心に持ち帰る 本の言葉 〜 「日本の文学論」竹西寛子

読み終えていない本について書くのはどうなのかーと思いますが、幾つもはっとさせられる文章が出てきて、しかも途中から飲みながら読んでいるので、気づけばほろ酔い状態、となると読む集中力は途切れがちで、むしろ気ままに自分の思いを書く方が適当なのだ…

心地よいウイット 〜「ニューヨーカー・ノンフィクション」常盤新平 編・訳

最近は<巣ごもり>気味なので、このさい難破船のごとき部屋の本を整理しようと思い立ったのが昨日。開始15分で早くもどう収拾をつけるか茫然とし始め、手にとった昔の本をちょっと開いてみたら、現実逃避という悪癖が即座に作動して読みふけってしまいまし…

爆発的に感染する<幻> 新型コロナの今だから 〜「日本を襲ったスペイン・インフルエンザ」速水融

新型コロナが世界に広がり、日本では学校が一斉休校、コンサートやイベントが中止になり、大相撲やセンバツ高校野球は無観客開催と、2020年3月は大変なことになっています。マスクは分かるとしても、トイレットペーパーや紙おむつまで店頭から消えたとなると…

雨を聴く 深い癒しのとき 〜「日日是好日」(にちにち これ こうじつ)森下典子

書店に行くたびに目にし、気になりながら、なかなかレジまで持って行かない本。チェックリストのようなものですが、最終的に読むことなく忘れていく1冊もあれば、何か小さなきっかけで買う本もあります。 「 日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ…

本能寺 張り巡らされた謀殺計画 〜「信長の革命と光秀の正義」安部龍太郎

2020年のNHK大河は明智光秀が主人公ということで、書店にも光秀関連本を集めたコーナーができています。信長が光秀に討たれた本能寺の変は、日本の歴史を大きく変えた事件でした。なぜ光秀は主君・信長を急襲したのか。現代に至るまでいろいろ言われてきた大…

こんなにも多彩! 下っ端の食生活 〜「幕末単身赴任 下級武士の食日記」青木直己

下級武士がけっこういろいろ食べて、昼から飲んで、「何だか楽しそうだなあ」と、うらやましくなったのが「幕末単身赴任 下級武士の食日記」(青木直己、ちくま文庫)です。わたしが持つ「下級武士=貧乏」「武士は食わねど.....」、あるいは「清貧」という…

目からウロコ 波乱万丈の大河ドラマ 〜「日本語の歴史」山口仲美

無意識のうちにしかめっ面しながら、ミスタイプしてイライラしながら、自分がいま書いているこの文章も......実は「そんな大河ロマンを秘めていたのか!」。目から大小のウロコが何枚も落ちてスッキリ爽快になるのが、「日本語の歴史」(山口仲美、岩波新書…

鮮やかに浮かび上がり 消えていく人びと 〜「いのちの姿 完全版」宮本輝

はじめて読んだ宮本輝さんの小説が何だったか、もう記憶が定かでありません。デビュー作で太宰治賞を取った「泥の河」だったか、芥川賞の「蛍川」だったか。前後して村上春樹、村上龍さんがデビューした時期で、当時はこの2人に比べると地味な印象でした。 …

こんなにも楽しい古書の世界 〜「古本屋控え帖」青木正美

令和最初の正月、久しぶりに雪のない中で初詣に出かけ、年末に地元の古本屋で仕入れてきた本を、ぽつりぽつり拾い読みして過ごしています。この時期は子供たちも家に帰って賑やかになり、ゆっくりページをめくる時間が意外にありません。気が向いたとき、さ…

出版が華だった時代 〜「ベストセラー伝説」本橋信宏

夕陽の向こうに消えていった懐かしい出版物とそれを作った編集者たちの物語です。 という冒頭の書き出しに惹かれて、つい買ってしまったのが「ベストセラー伝説」(本橋信宏、新潮新書)です。今は消えてしまったか、見る影もないけれど、かつて出版業界の最…

旧仮名遣いの魅力 この冬の課題^^ 〜「ヨオロツパの世紀末」吉田健一

先日、地元の古本屋さんをのぞいて見つけ、つい買ってしまったのが「ヨオロツパの世紀末」(吉田健一、新潮社、1970年)です。タイトルからして「ヨーロッパ」ではなく「ヨオロツパ」。本のシンプルな装丁、古びた佇まいも含めてなんだかカッコいいというか…

なぜ、という問い 〜「謝るなら、いつでもおいで 佐世保小六女児同級生殺害事件」川名壮志

一人の新聞記者のルポルタージュです。事件は2004年6月1日、長崎県佐世保市の大久保小学校で起きました。6年生の女子児童が、同級生の御手洗怜美(さとみ)ちゃんを多目的教室に呼び出し、後ろから首をカッターナイフで深く切って殺害。返り血に染まった女子…

私的ノンフィクションのすすめ 〜雑文

「事実は小説より奇なり」という、使い古された言葉があります。わたしにとって、これには二通りの解釈があります。 1つ目。小説家がどんなに派手に想像力を働かせても、現実に起きる展開には及びません。地震、原発、スーパー台風、テロなどを描いた小説は…

ロマンとリアルの対峙 〜「三島由紀夫と司馬遼太郎」松本健一

特定の作家を取り上げ、批評して1冊にすると、自ずから読者をかなり限定してしまいます。「三島由紀夫と司馬遼太郎」(松本健一、新潮選書)で言うなら、三島や司馬の読者でない人がこの本を開こうとするだろうか...と考え、しかしまた、はたと自分の考えを…

本を愛した5人の男 〜「古本屋奇人伝」青木正美

書物、雑誌、新聞と、出版物を取り巻く環境は1990年代半ば以降、劇的に変化し続けています。「紙の活字文化」という視点でまとめるなら、「衰退」という2文字があらゆる数字から浮かび上がります。衰退する世界の、日々印刷されて店頭に並ぶまでがメーンスト…

東アジアの外交戦略 昔のことですが.. 〜「新版 古代天皇の誕生」(吉村武彦)

4日かけて、昔習った日本史のおさらいをしていました。歴史に詳しい方には今さらと笑われそうですが、日本から中国の都・洛陽にまで使者が行き、後漢の光武帝からあの有名な金印「漢委奴国王」(漢の委わの奴なの国王)を授かったのは、西暦57年でした。これ…

新しい階級社会の出現 今とは 〜「上級国民/下級国民」橘玲

今週のベストセラー総合9位(2019.8.14集計)に入っていて、読んでみたのが「上級国民/下級国民」(橘玲=たちばな・あきら=、小学館新書)です。事前知識で興味をひかれたのですが、ちょっと参ったのが刺激的な言葉を連ねたカバー。「何だよこれ..」と、本を…

古書を通じた 文化史の醍醐味 〜「一古書肆(いちこしょし)の思い出」反町茂雄

古本屋さんに通う目的とは何でしょうか。新刊を安く買える。漫画、文学書を問わず、シリーズ物の揃いや全集が気軽に一括で手に入る。マニアなら、絶版書と出会える。得意なジャンルを持つ専門的な店(おもに東京・神田)で、初版本や色紙、昭和初期以前の雑…