ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

日日雑記

文字通り、身辺雑記の雑文です。エッセーと称する自信はありません。本に関する雑文であることも多いので、<小説>など他のカテゴリーと重複していることもあります。

日日是好日

陽が射し、朝から1カ月ほど季節を先取りしたような陽気でした。庭先で桜桃の開花が始まり、春を告げています。20年余り前、一番花の枝を折って母の枕元へ届けたことを思い出します。 末期がんで在宅死を望んだ母は、翌日逝きました。 庭に出て雪つり縄を取り…

京都・大原の早春

2月がまもなく終わる寒い日、朝から車で高速道路を走りました。行き先は京都の山里、大原。代わり映えしない日常を、変えてくれるのは小さな旅です。京都は何度か訪れたことがあっても、大原とその周辺は未踏の地でした。 現役引退し、差し迫った仕事に縛ら…

新しい絵に着手

遠くに暮らす孫娘を小品に描き始めました。 いまはざっくりした下絵の途中。気が向いたときに、これから少しずつ進めるつもりです。細部を描きこむ前なので、まだあまり女の子らしくないかなw。でも最初のざっくりで、この子の中身をつかみたい、なんて。 第…

ぼくは二十歳だった。それがひとの... 〜ポール・二ザン「アデン アラビア」のことなど

昨夜、麦のお湯割りをちびちびやりながら、武者小路実篤について書きました。小説「愛と死」の読後感を綴ったのですが、投稿を公開してから、やおら立ち上がり、踏み台に乗ってごそごそ。確かこのあたりにあったはず...と、書架の一番上の奥からポール・二ザ…

晴れ着と油彩画

絵の額装は、手塩にかけて育てた子に、晴れ着を着せるような気持ちになります。 子の出来の良し悪しは横に置いて、こんな色合いが似合うだろうか、デザインはどんなのがいいか、できれば安く...。というわけで晴れ着、ではなく油彩額を昨年末からネットで物…

翻訳家と剣客小説

常盤新平(1931ー2013)という名前を聞いて、「ああ」と、思い当たる人はそう多くないと思います。アメリカのペーパーバックスを読み漁った若い時代を描いた自伝的小説「遠いアメリカ」で、1986年に直木賞を受賞。しかし、小説は余技でした。 わたしにとって…

地震

うちは震度5強。本が落ち、水槽の水が勢いよくこぼれました。幸いにも本棚が倒れることはありませんでした。津波警報が出て、家の中を確認する間もなく車で丘陵目指したけれど、幹線道路は渋滞。あせりました。 夜9時過ぎまで避難していて、とりあえず帰宅。…

雨の大晦日

朝9時ごろ起床し、窓から外を見れば雨。大晦日といえば雪の記憶しかないけれど、いつの間にか年末年始に雪を踏む年が少なくなってしまった。子供のころは炭火の炬燵に首までもぐり込み、ブラウン管のテレビで年末特番を見ながら、まだもらってもいないお年玉…

コーヒーを淹れて「BRUTUS」を読んだ

マガジンハウスから出ている「BRUTUS」という雑誌があって、最新号の特集が「理想の本棚」。わたしは雑誌類をめったに買わないのですが、表紙に惹かれて少し立ち読みし、戻すことなくレジへ向かいました。 面白そう。この特集、本好きの一人としては、立ち読…

凪の日 夕陽の日本海と北アルプス 〜池波正太郎、カミュ

まだ初冬とはいえ、晴れた日は北陸、東北の日本海側に暮らす人たちにとってかけがえのない1日です。 寒気とともにシベリアや中国から流れてくる冷たい冬雲は、北アルプスなど本州の山々にぶつかります。雲は、日本海側に雪や雨を降らせて消え失せる。そして…

麻婆豆腐 〜食の記憶・file3

中国の四川に暮らしていた麻(まあ)婆さん。彼女が作った豆腐料理が「麻婆豆腐」のルーツだとか。30年ほど前に読んだ、中華の鉄人・陳建一さんのエッセイに書いてありました。 その本、探したのですが、6畳しかない部屋のいったいどこに隠れているのか見つ…

田舎のランチにご招待 〜オーベルジュ「薪の音」

真昼といえど太陽の位置が低い、晩秋の小春日和。見渡せば、里山は紅葉と黄葉が、斜めからの光に輝いていました。 ちょいとばかり早いけれど、今年も頑張った自分にご褒美と、車を飛ばしてのどかな中山間地の小さな集落にあるお店へランチに出かけました。ご…

一枚の絵、3年目に入りました

2021年11月から描き始めた油彩のモズの巣。ついに丸2年を過ぎて、3年目に入り、まだ描き続けています。 最初は1年あれば完成するだろうと、甘く考えていました。昨年、さすがにもう1年かければ大丈夫だろう。次は風景か、人物だって描きたいしー、と思ってい…

男の子?が得意??、アンプの接点復活に挑戦

朝飯食ってすぐ、オーディオ機器のメンテに着手しました。 10数年前から、CDやFMを聴くとき、音量調節つまみを回すと「ガリっ!」「バリバリっ!!」と、一瞬の大音響。経年劣化による、いわゆるガリノイズ(音響マニアのニッチな専門用語)です。 数年前に…

太宰治と三島由紀夫 〜作家つれづれ・その7

少し前から、書店に行くと気になっていたのが、角川文庫の近代文学に使われているカバーです。こんな具合。 みなさま、自分のイメージとどれくらいマッチするでしょうか? 文豪ストレイドックスコラボカバーをさらに見る うーん、個人的に太宰はじめみんな垢…

アナログ人間、カメラの進歩に脱帽する

秋晴れに誘われ、天空の城の一つ福井県大野市の越前大野城まで、往復400キロ車を飛ばしました。 スマホさえあれば途中の情報収集に困らず、財布代わりになり、撮影もできて、なんともすごい時代になったものだと今さらながら感心します。 昔、わたしが新聞記…

「旅と郷愁の風景」を見る 〜川瀬巴水展・石川県立美術館

車のアクセル踏んで小さな旅をして、金沢駅近くのホテルに投宿。深夜まで、腐れ縁の友と飲み、ホテルで目が覚めたら小雨模様でした。 チェックアウトを済ませ、加賀百万石の名園・兼六園に隣接する歴史文化施設エリアへ。駐車場に入れたころちょうど雨が上が…

新米届く 〜なんでも旬は美味しい

精米したばかりの新米が、どんと届きました。亡き母の実家は農家。とっくに80歳を越えた叔父が、毎年軽トラを運転して届けてくれます。玄米から表面を削り取った白米はまだ精米時の熱がこもっていて、袋の口を開けて冷ましました。 わたしのウオーキングルー…

長谷川等伯ではなく浮世絵を見る 〜石川県立七尾美術館

富山県氷見市から日本海に面した山中の高速道路を走り、能登半島の中ほどに位置する石川県七尾市へ向かいました。8月末だというのに、車の温度計は35度。 歴史的に七尾市は海運で栄え、戦国期には背後に迫る半島の丘陵に室町幕府の有力大名で管領・畠山一族…

庶民の悲哀を軽く見るなよ! 〜「五郎治殿御始末」浅田次郎など

小学館の日本の歴史で、いま明治前期を描いた「文明国を目指して」(牧原憲夫)を読んでいます。ふと思い出したのが、浅田次郎さんの「遠い砲音(つつおと)」という短編でした。 明治維新といえば、身分制度の撤廃、教育義務化、赤煉瓦の建築、ガス灯など前…

酷暑の夏

酷暑、です。今年はひときわ。ふう。 わたしが暮らす地でも、7月下旬から連日35度超え。基本的に、気温は照り返しのない草地の高さ1・5メートルの日陰で観測しますから、太陽に晒された場所は軽く40度を超えているはずです。どうなるんだろうか、この地球は…

きょう買った本と食べた蕎麦 〜池波正太郎のことなど

日曜日。モーニングコーヒーを飲みながら、facebookを眺めていると、や!。 地元の古本屋さんが、富山県南砺市井波の古刹・瑞泉寺門前にテントで出店しま〜すと、ポストしていました。朝から日差しが強いけど、行ってくるか。こういう機会に出会える本という…

小さな美術館とわたしの絵

先週末から、6速マニュアルのわが脚..ではなく車を駆って、長野県の安曇野を巡ってきました。個人的な用件があっての1泊2日でしたが、2日目はフリーだったので、久しぶりにツーリングを楽しみました。 長野はもちろん、日本各地で35度を超える猛暑の中。目指…

月下孤灼 〜わたしと酒の話

朧げな記憶をたどれば、それは地元の神社の秋祭りの日。宴席でした。親戚一同が集まって酒を酌み交わしている。父も母も、伯父や叔母たちも若くて働き盛りでした。昭和30年代が終わろうとするころ、高度経済成長期にある日本の片田舎のとある家、座敷に華や…

雨の7月1日 

1年の半分が終わり、折り返した7月最初の今日は朝から雨でした。気持ちよく晴れた日が好ましいのは当然だけれど、この時期の雨は緑を濃くしてくれる。庭の木々や芝が、夏に向けて勢いを増すのが目に見えます。 雑草も一緒に元気になるのは困ったものですが、…

日日是好日を目指して

久しぶりの雨。ぱらぱらと、止むことなく雨音が耳に入ってきます。緑が一気に鮮やかさを増し、紫陽花の季節がやってきました。 また季節はめぐりきて うすむらさきのほほえみはよみがえる ...と始まる、失恋の詩(金井直「あじさい」)があります。高校生の…

三島由紀夫ではなくバラ 〜しかも売れ残り処分品の

バラ、薔薇。華やかな花の代表格でしょうか。結婚式場だけでなく、小説、詩などさまざまな文学作品にも登場します。 「薔薇刑」という三島由紀夫の裸体を被写体にした、細江英公の写真集もありました。鍛え抜かれた男の筋肉。カメラを睨む三島の眼。 三島の…

娑婆に戻る

ふう...娑婆に戻れる。 娑婆(しゃば)と書いて、もしかすると若い人は首を傾げるのでは...。ふと不安になりました。もともとは「この世」を指す仏教用語ですが、昔のやくざ映画では刑務所から出所したときの、お決まりの台詞によく使われていました。 娑婆…

芝と語り合う

昨日は午後から、庭の芝生に目土(めつち)を入れて日が暮れました。目土というのは、夏にかけて芝生が葉を広げる前に、砂をまく作業です。「芽土」ともいい、前年伸びた茎が新たな砂に浅く埋まることで発芽が促され、毎年若くて密な状態を維持することがで…

チャットGPT 話しかけてHALを思い出した

チャットGPT。最近、やたらニュースで取り上げられるAI(人工知能)の会話機能で、アメリカの「OpenAI」という会社が開発して無償提供しています。論文やレポート、読書感想文など、チャットGPTに「書いて!」と頼めば即座に応えてくれるので、大学などでも…