ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

日日是好日

 陽が射し、朝から1カ月ほど季節を先取りしたような陽気でした。庭先で桜桃の開花が始まり、春を告げています。20年余り前、一番花の枝を折って母の枕元へ届けたことを思い出します。

 末期がんで在宅死を望んだ母は、翌日逝きました。

 庭に出て雪つり縄を取り払い、地面を見回せば早くも伸び始めている雑草。小さな花をつけている草もあります。放っておけず、黙々と抜き続けました。

 前夜、部屋の本棚の片隅に懐かしい<昭和の路地>が完成しました。

 

 

 昭和の街並みを再現する模型・ジオラマです。2月初めから制作に入って1カ月半、気づいてみれば大いに楽しんでいました。とにかくパーツが細かい。最初は気が遠くなりました。

 

 雑念が入ると制作が進まない。あるいは組み上げを失敗する。没入するしかないわけで、結果的に日常を離れた時間に遊ぶことができます。

 完成した路地を左右に展開すると、こんな具合。計10カ所にLEDの灯りが仕込んであって、電源接続と配線もかなり気を遣いました。

 

 

 この一式、「櫻花小巷」というジオラマキットです。5000円くらいで、これだけの日々、制作を楽しめたのでわたしとしては安い買い物だったかな。例えばゴルフなら、もっと高くて1日で終わってしまうし。

 作り始めたきっかけは、単純です。

 「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」という全国巡回展を、地元の美術館で観たから。明治期の息をのむような工芸作品の数々と、若い現代作家たちの作品群でした。

 感嘆したわたしは、無性に自分でも何か作りたくなりました。そして、ジオラマ制作となったわけです。いや、ちょっと違うやろ。と自ら突っ込みを入れつつ、ネットの買い物サイトで注文。そして、ちょうど春がやってくる前夜に完成しました。

 

 あの世の母に、笑われそうです。

 「お前は幾つになっても、変わらんねえ」