ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

フィレンツェの500年前の空気を吸う 〜「ルネサンス画人伝」ヴァザーリ

ジョルジュ・ヴァザーリ(1511ー1574年)の名前にピンとくる人は、ごく限られていると思います。イタリアの画家、建築家。芸術家としてより、その名がルネサンス期の美術を研究する人たちにとって必須であるのは、彼が「画家、彫刻家、建築家列伝」を書き残…

雪見酒

桃の節句も近いというのに、わたしの住む地は大雪警報発令中です。家に籠るのが一番...なのですが、こんな日に限って朝から仕事の打ち合わせが入っていたため、昼まで出かけていました。 朝食前に、駐車場の雪かきでひと汗。時間に余裕を持って車で家を出る…

コロナ禍の群像 〜「東京ルポルタージュ 疾病とオリンピックの街で」石戸諭

新型コロナウイルスのパンデミックは、人びとの生活を一変させました。自粛、リモートワークなど、さまざまな言葉で新しい日常を切り取ることができますが、一つの言葉の背後には異なる事情を抱えた千差万別の暮らしと人生があります。 「東京ルポルタージュ…

江戸の「景色」に遊ぶ 〜「鬼平犯科帳」池波正太郎 その2

師走のころから立春を過ぎたここまで、大きなエネルギーを注がざるを得なかった仕事にようやく一区切り、一息ついて、さてどうしようかと、焼酎お湯わりを舐めていた昨夜、手にしたのは「鬼平犯科帳」(池波正太郎、文春文庫)の16冊目でした。 このシリーズ…

追悼 西村賢太

私小説作家、西村賢太さんが亡くなりました。私は決して、西村さんの熱心な読者ではなかったので、タイトルに<追悼>と冠するのはおこがましいのですが、以前から現代の文学シーンにおいて特異な存在感を発する作家だという実感があり、突然の死は驚きでし…

言葉は面白い と目からうろこ 〜「日本語の大疑問」国立国語研究所編

わたしは言語学を学んだこともなければ、日本語を研究する趣味もありません。しかし、三浦しをんさんが国語辞典編集者の地道で味わい深い喜怒哀楽を描いた小説「舟を編む」などは、心底楽しみながら読みました。<ことば>というものに少し、興味をそそられ…