ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

森田知事が青春のシンボルだったころ 〜「文學界」昭和60年11月号

お世辞にも几帳面とは言えない性格だから、本の整理がつかなくなって、ずいぶんになります。だからある本を探していたら、書架の奥から雑誌「文學界」昭和60(1985)年11月号が突然出てきても、なんら不思議はありません。 不思議なのは、なぜこの年のこの文…

ヒマワリの悲しい秘密 〜「盤上の向日葵」柚月裕子

前半を読んだ段階では、「盤上の向日葵」(柚月裕子、中央公論新社)をブログに書くかどうか迷いました。わたしの中でプラスよりもマイナスが上回る作品については、書かないことにしています。 何度か中断しながら読み続けるうち、後半から面白くなって、最…

半世紀前のドキュメンタリー・ドラマ 〜DVD「レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯」

レオナルド・ダ・ヴィンチというルネッサンス期の天才に、わたしは長く憧れと敬いの気持ちを持ち続けています。普段はそんなことを全く意識しませんが、自分がどうありたいかという基本のところで、無意識のうちにその生き方をお手本にしている部分が、間違…

ちょい悪の、看護婦さん 〜「ベスト・エッセイ2016」日本文藝家協会編

「やめられない、とまらない〜」という、ビールと大変相性のいいスナック菓子の古典的コピーが、この本を読んで脳裏によみがえりました。頃よく日も暮れたので、さっそく飲み始めましたが、手元にリアル<かっぱえびせん>がないのは...痛恨の極み。 2016年…

自分の絵と旅した5カ月

思い返せばキャンバスの下塗りから始まり、この静物画と旅をしていたような5カ月でした。 やや感傷的な書き出しになったのは、描いている途中に老犬・くーが逝ってしまったからです。描き始めてから今日まで、まったく絵筆を持たなかった日は10日もないでし…

涙が出るほど哀くて、笑ってしまう 〜「火花」又吉直樹

お笑い芸への愛情と切なさが、ひしひしと伝わってきました。愛情が深ければ苦悩も深く、文章からは文学への真っ直ぐな思いが漂ってきます。う〜ん、これは心に残る秀作ですね。 「火花」(又吉直樹、文藝春秋)を今ごろ読んで、褒め言葉を並べているのだから…

きっと彼女を探し出す 〜「ノーマンズランド」誉田哲也

「ノーマンズランド」(誉田哲也、光文社文庫)を読みました...と書くと、すかさず「おいおい、前回こんなの4冊買いましたと、なんだかんだ言ってたのと違う本じゃないか!」と突っ込まれそうですが、はい、違うのです。申し訳ありません。まあ、寂れたブロ…

こんなわけで こんな本を買う

道路上の除雪がかなり進んだことに加え、今日は暖かかったので、車高が低い、しかも後輪駆動のマイカーでも大丈夫だろうと外出しました。車道はほぼアスファルトが露出していますが、路肩は除雪で積み上がった雪が壁になっています。一部は、2車線のうち走…

わたしは果てない夢をみる 〜「三度目の恋」川上弘美

「むかしむかし....」で始まる、おばあちゃんの昔話。語りの前置きとして、各地の方言に形を変えながら伝わってきた、あるフレーズがあります。 ありしか なかりしか知らねども あったこととして聞かねばならぬぞよ これ、直裁で素朴で、かつ<物語>という…

日々の雪譜 その3・古墳やピラミッドを作った人びとは...

意に反して、豪雪ブログに衣替えしてしまったこのところ。雪は午後に一段落し、久しぶりの陽射しがうれしい。白く輝いているのは、庭に出現した<プライベート・ゲレンデ>です^^。 雪かき作業は、当然のことながら排除した雪をどこに移動するかが大問題。…

日々の雪譜 その2・豪雪でロックダウン

気象台によると今日の昼で積雪1メートル20センチ、富山は35年ぶりの豪雪になっています。ここまでの雪は、さすがに参るなあ。 とにかく玄関から道路までのアプローチを確保し、車が車庫から出られるようにと、朝から3時間の雪かきでした。全身汗だくで着替え…

日々の雪譜

昨冬は異常に雪が少なく、地球環境の行方にいっそう不安を感じたものですが、今冬は12月に1度まとまった積雪があって、何となく安心しました。そして今朝、目を覚ますと未明からわずか数時間でちょっと降り過ぎだろw...の世界でした。 ( ↑ 今朝の玄関からア…

青春の屍が埋まっている 〜「高田馬場アンダーグラウンド」本橋信宏

10代の終わりから20代始めは、ある年齢に達した多くの人にとって、特別懐かしい時期ではないでしょうか。子供ではないけれど、まだ社会に踏み出していない大学時代。生活をぎりぎりまで切り詰め、わたしを東京の大学に出してくれた両親に今は感謝しかありま…

澁澤龍彦 〜作家つれづれ・その2

何度もくり返しわたしを惹きつける、そんな要素の一つに<不完全さ>というものがあります。 酒に例えるなら、磨き上げられたグラスに注がれる半透明のカクテルのような。美しい色合いが、早く味わってくれと囁いてきます。飲む前から酔ったような気分になっ…