ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

赤トンボの季節 全集物は別巻が面白い? 〜「日本の詩歌」別巻 日本歌唱集

夕やけ小やけの あかとんぼ 負(お)われて見たのは いつの日か ダイエットが気になり始めた数年前から、わたしの趣味の一つになったのが田舎道のウオーキングです。歩くのは数キロから10数キロまで、様々なマイコースがいつの間にかできました。そして車で…

愛しき親友の植物たち

このブログを始めたとき、自己紹介に「本と車と酒とガーデニングが好きな昔人間です」と書きましたが、これまで本以外についてほとんど投稿してきませんでした。秋を迎え、小さな、緑のいのちが部屋に芽吹いてきたので少しだけガーデニングの報告を。興味の…

日本史年表と小説 大河の一滴 〜「絶海にあらず」北方謙三

気づけば秋分の日を過ぎ、日没がずいぶん早くなりました。秋の夜長とはよく言ったもので、隣の部屋のテレビから聞こえてくるローカルニュースを聞き流しながら、窓からの夜風に深呼吸。昼に読み終えた本を思い起こし、日本史の年表をめくったりしています。 …

凛として健気 そして傷だらけにうるうる 〜「少年と犬」馳星周

そもそも直近の直木賞受賞作について、こんな偏った言い方はあまり適切でないのですが...「なにせ犬好きにはたまらない小説です!」。犬に興味がない人にも、たぶん...。 いやわたし、ネコに限るという人の気持ちを推しはかることはできないので、断定はでき…

淡々と語られる孤独 密かにシュール 〜「首里の馬」高山羽根子

2020年上半期の芥川賞は受賞2作で、どちらを読むか迷って選んだのが「首里の馬」(高山羽根子、新潮社)でした。たまたま高山さんと地縁によるつながりがあるという、深い説得力に欠ける単純明快な理由です^^;。 単行本で150ページ余りなので、わりとさ…

白骨と雪 山に行った日 〜「楢山節考」深沢七郎

姥捨山とは。食糧の乏しい山間部の集落で「口減らし」のために、ある年齢に達した老人を山に棄てる物語です。生きるための厳しい営み、因習に塗り込められた村社会。日本各地に伝わる棄老伝説を、文学として見事に昇華させたのが「楢山節考」(深沢七郎、新…

真面目な下ネタ比較論? 〜「現代語訳 日本書紀」(福永武彦訳)

「古事記」と「日本書紀」。日本最古の歴史書・2書を称して「記紀」は、その昔教科書に出てきました。当時、テスト対策で覚えるために「古事記、古事き、こじき」と暗唱にすると、条件反射みたいに乞食さんの集まりが頭の中に浮かんで...。そんな記憶がよみ…

目の前の路地をきれいに お絵かきの目標

うまくいかない。というか、難しい。 こつこつやっている、お絵かきのことです。F6号という小さなキャンバスに静物画を描こうと構図を決め、事前の試し描き(エスキース)として、構図の一部にある2個のイチジクをスケッチブックにデッサンしました。 なにせ…

生きて在る それだけで美しい 〜「百万回の永訣 がん再発日記」柳原和子

死を語るとは、いのちを語ること。 かつて医師や看護師、患者のみなさんから聞いた多くの言葉、その核心を要約すればこのようになります。長く取材者としてキャリアをつないできたわたしは、二度、がんと終末期医療をテーマにしました。 最初は1980年代終盤…

本のこと、そしてお絵かき

本を併読する人は、どれくらいいらっしゃるのでしょうか。わたしは、どちらかといえば併読派です。数日のうちに読み上げてしまう本と、1カ月から、場合によっては数カ月かけてのんびり読む一冊が同時進行。いま、のんびり読書は「現代語訳 日本書紀」(福永…

くーのこと

くーは、16歳2カ月のオスのラブラドール・レトリバーです。もちろんわたしではなく、うちの『くー』。人間でいえば、とうに100歳を超えています。大型犬は小型犬に比べて短命なので、6頭いた兄妹犬で、今も生きているのはくーだけになりました。 そして今年…