ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

最先端の図書館と昭和の町の図書館

巨大図書館で思い浮かぶのは日本なら国立国会図書館ですが、個人的にはもう1館、紀元前に創立されたエジプトのアレクサンドリア図書館です。ギリシャ、ローマ時代の学術のシンボルとも言える古代施設でした。 なぜそんな図書館が思い浮かぶのかは、たぶん...…

絵を描いて、歯痒く、面白く

絵を描く面白さって何だろう。 よく自問してみるのですが、これがなかなか難しい。そもそも表現行為の「面白さ」とはどんな要素で構成されているのかー、なんて考えること自体が興醒めで愚かなことなんだけど。 ところが分かっていながら、また考えてしまう…

テロルが残したもの

「新盆を迎えた人」とは、この1年間に亡くなり、初めてあの世からわが家に戻る人のことです。それぞれの家が送り火で、ご先祖さまたちを再びあの世に送ればお盆が明けます。 まさか今年、新盆を迎える人の中に加わると想像もしていなかったのが安倍晋三元首…

苦しみは天から降る光のせい 〜「くるまの娘」宇佐見りん

話題作「推し、燃ゆ」で芥川賞を取った宇佐見りんさん。受賞後の第一作が「くるまの娘」(河出書房新社)です。 書店に平積みされ、帯にある出版社の<推し>がすごい。まず「慟哭必至の最高傑作」と目に飛び込んでくる。山田詠美さん、中村文則さんの推薦文…

「粋」と「いなせ」 〜「天切り松 闇語り」浅田次郎

歳はとりたくねえもんだの、くーさん。昔なら三日とかからなかったろうに、最近はのんびりかい。まあ、若え時分と同じにやれってほうが無理な話だがの。 ...と、「天切り松 闇語り」(浅田次郎、集英社)を読み終え、わたしは登場人物の東京弁(いうまでもな…