ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

最先端の図書館と昭和の町の図書館

 巨大図書館で思い浮かぶのは日本なら国立国会図書館ですが、個人的にはもう1館、紀元前に創立されたエジプトのアレクサンドリア図書館です。ギリシャ、ローマ時代の学術のシンボルとも言える古代施設でした。

 なぜそんな図書館が思い浮かぶのかは、たぶん....大学の英文科の卒論に書いたイギリス20世紀前半の小説家、ロレンス・ダレルの長編「アレキサンドリア・カルテット」に出てきたから。だと思う。けれど、あんまり記憶鮮明ではありません。

 アレクサンドリア図書館とは何の関係もありませんが、今日、高速道路に乗って1時間近く車を飛ばし、7月に移転オープンした隣県の石川県立図書館に行ってきました。本好きの間では話題(?)の図書館です。で、これが

 凄い...。

 思わず連想したのは「アレクサンドリア図書館」という、見たことも行ったこともない図書館でした。

 吹き抜けの360度見渡せるアーチ構造(これがギリシャ・ローマ時代を連想させる)。吹き抜け最上階の4階まで、ぐるり延々と本を見ながら上るのもよし。一気にエレベーターで行くのもよし。中空にはアーチの真ん中を結ぶ回廊。これはもう図書館であり、図書博物館でもあります。

 コンサートも企画されているとか。なるほど吹き抜けの巨大空間は楽器が鳴るだろうなあ。聴衆席は360度4階まであるわけだし。

 さて、わたしは1階ホールの企画展示を見てから、大きな円を何周も描いて上へ歩きました。道中、ただ本が並ぶだけでなくさまざまな企画展示があります。例えばこんな具合に。

 開架、展示30万冊。収蔵庫に200万冊。普通なら収蔵庫の奥に眠る明治から昭和初期にかけての文芸雑誌の創刊号や国内外の稀覯本もたくさん並び、しかも多くは手に取ってめくれます。保存状態も良好。

 これ、誰でも手にしたら傷まないだろうか...なんていらぬ心配をしてしまいました。館外貸し出し可かどうかは尋ねませんでしたが、考えてみると館内閲覧は原則どんな収蔵本も可能だから、稀覯本だろうと手に取ることができて当然なんだけど。

 そして、あちこちにドームの外への抜け口があって、

 太い幹から外に伸びた枝のような、別の書籍空間がそこにまた。

 

 閲覧席は個々のブース形式でコンセント、wifi完備。広いキッズコーナ、喫茶ブースその他も盛りだくさんです。

 喫茶は平日にもかかわらず列ができていたのであきらめました。つい「自宅の近くにこれがあればなあー」と思いました。

 

**********

 わたしが小学生だった昭和30年代後半から40年代前半、通っていた木造校舎に隣接して、古びた平屋の町立図書館がありました。小学校の図書室に大人向けも加えて移設して、粗末でも一応別棟だから「町立図書館」みたいな。

 おばさんが図書カードに返却日を記入してくれて、本を借りる。すぐ読んでしまうので、返却の延滞はあまりなかったのですが、ときには期限まで返せなかった。

 延滞金は1日1円。当時、通学路にある駄菓子屋でビスケットを買うと1枚1円で、子供にとってその1円は安いような、高いような、微妙な金額でした。1円に、1円の価値があった時代。

 今思えば、1年延滞したって365円だったんだけどね。