4日間にわたり、仕事も放り出して、愛知から東京へと回ってきました。そして帰り着くと、<国境の長いトンネルを抜けると雪国であった>...とまでは言わないけれど、北陸は冷たい雨が降る冬の始まりに変わっていました。
必要があっての遠出。そこに組み込んだ個人的な立ち寄り先が、千葉のホキ美術館でした。保木将夫さん(2021年6月死去)が好きな写実絵画を買い集め、ついに美術館まで作ってしまったのです。
19世紀の終わり以降、絵画の世界は実に多様、多彩な展開を遂げてきました。一時は絶えたようにさえ見えた写実絵画が、新しいかたちで復活しつつあることが、この美術館を訪ねるとよく分かります。写実絵画の専門美術館は世界的にも稀で、2010年に開館し、今は現代写実の聖地みたいになっています。
地上1階、地下2階の三層に、ギャラリー1から9まで、長い回廊を巡らせて作品を展示しています。現在は入るとまず、収蔵作品から選んだ静物画が続いています。そして
「やっぱり、写真では分からん!」
実物の作品群を見ながら、まず思ったのはそのことです。作品のかなりは、既に何冊かの画集で見ていました(この美術館の収蔵作品は、ちょっと例がないほど何種類も画集が刊行されているのです)。
しかし、目の前の実物の存在感は全く別物です。当たり前ですが。
画布から20センチ以内まで顔を近づけて、細かい筆遣い、絵の具の薄さ厚さ、要はタッチをしっかり観察できました。心中、さまざまな「うーん」の連続。全体を眺め、近づき、また引いて。小難しいことは省略して、楽しめました。
かつて文化部記者だった時期もあり、美術の企画展や個展は大げさではなく何百回も見てきました。でも、本当のことを言うと、仕事を抜きにすると、作品の前でいちいち立ち止まりたいと思う展示は滅多にありません。
ところがここでは足が前に進まず、休憩しながら見終われば心地よい疲労感。
帰りにショップで、人物、静物、風景をそれぞれ1点、お気に入りのクリアファイルを買いました。静物は原寸に近いのですが、風景の実物は大作、人物もかなり大きい作品です。
さて、昨日帰宅しましたが、放り出していた仕事の皺寄せがさっそくのしかかっています。うー。こんなブログなど書いている余裕はないはずなのに...