2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧
知人に、図書館司書の女性・Sさんがいます。 「藤沢周平とか60代後半以降のおじいちゃんたちに、すごい人気なんだよねー。時代小説って、なんであんなに借りいくんだろ」 と首をかしげるのです。なんとなく理由を説明できる気もするのですが、短く端的な言葉…
「天才」(石原慎太郎、幻冬舎文庫)とは、だれか。カバー写真にある通り、国民の絶大な支持を得た総理大臣、そしてロッキード事件で逮捕、受託収賄罪で有罪判決を受けた田中角栄です。この小説の面白さは、書いた石原慎太郎さんが、当時は「田中金権政治」…
下級武士がけっこういろいろ食べて、昼から飲んで、「何だか楽しそうだなあ」と、うらやましくなったのが「幕末単身赴任 下級武士の食日記」(青木直己、ちくま文庫)です。わたしが持つ「下級武士=貧乏」「武士は食わねど.....」、あるいは「清貧」という…
ヤフオクで本の出品を眺めていたら、1970年代の月刊誌「ユリイカ」(青土社)が100円スタートで多数出品されているのを見つけ、懐かしさに襲われました。出品者によれば、引っ越すことになり処分するよりは出品した、とありました。おそらくわたしと同年代か…
1989年から2019年までの30年間、毎年大晦日に渋谷のスクランブル交差点で無作為にインタビューし、「今年一番印象的だった事件や出来事」について語ってもらう。インタビュアーは堂場さん本人が実名で登場します。こうして集めた約300人の記録から、年齢、性…
無意識のうちにしかめっ面しながら、ミスタイプしてイライラしながら、自分がいま書いているこの文章も......実は「そんな大河ロマンを秘めていたのか!」。目から大小のウロコが何枚も落ちてスッキリ爽快になるのが、「日本語の歴史」(山口仲美、岩波新書…
一頭の馬の、誕生。まだ肌寒い北海道の小さな牧場。大自然の中で零細な牧場を営む一家が、大きな借金をして夢を託し、種を付けた牝馬(ひんば・お母さん馬)から、漆黒の体の仔馬が産まれます。顔に星の形をした白い毛の刻印を持って。 「優駿」(宮本輝、新…
若いころは、なかなか分からないんだよなあ...などとうそぶいてみるのは、年寄りの権利です。いや、単にわたしがかなり偏向した読書歴を持った年寄りだから、というに過ぎないのですが。 えっ、時代物?。武士とか町人とか、岡っ引の平次みたいのが出てくる…
わたしにとって本は、食に例えるならスローフードです。早飯食いみたいに、がつがつやっつけるのがいいわけではなく、食材や調理にこだわった手間も含めて楽しみたいと思っています。どこまで味わえるか、読み手の側の器量も試されていると考えれば、なかな…
はじめて読んだ宮本輝さんの小説が何だったか、もう記憶が定かでありません。デビュー作で太宰治賞を取った「泥の河」だったか、芥川賞の「蛍川」だったか。前後して村上春樹、村上龍さんがデビューした時期で、当時はこの2人に比べると地味な印象でした。 …
2020年の正月も過ぎ、トーハンの19年12月期ベストセラーが発表されました。トップは先月に続き「反日種族主義 日韓危機の根源」でした。出口の見えない日韓関係を象徴していると同時に、韓国という国に対してずっと抱いてきた「割り切れなさ」に対する一つの…
「癒し」という言葉がよく使われるようになったのは、いつごろからでしょうか。裏を返せば、人びとが癒しを求めるほど、この社会が住みにくくなり始めたのはどの時点だったのだろう。 読む人によって受け止め方は違うにしても、「桜風堂ものがたり」(村山早…
令和最初の正月、久しぶりに雪のない中で初詣に出かけ、年末に地元の古本屋で仕入れてきた本を、ぽつりぽつり拾い読みして過ごしています。この時期は子供たちも家に帰って賑やかになり、ゆっくりページをめくる時間が意外にありません。気が向いたとき、さ…