ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

こんなにも楽しい古書の世界 〜「古本屋控え帖」青木正美

 令和最初の正月、久しぶりに雪のない中で初詣に出かけ、年末に地元の古本屋で仕入れてきた本を、ぽつりぽつり拾い読みして過ごしています。この時期は子供たちも家に帰って賑やかになり、ゆっくりページをめくる時間が意外にありません。気が向いたとき、さらりと読み継ぐことのできる本がありがたいのです。

 東京・葛飾区で長く古書店を営む青木正美さんの「古本屋控え帖」(東京堂出版、1992年)は、最適の1冊でした。主に昭和の終わりから平成の初めにかけて、「日本古書通信」「古書月報」「新潮45」などに発表された文章をまとめてあります。

 本が好きな人、明治以降の日本文学が好きな人にとっては、これを読まなければ決して出会えなかったエピソード満載でなかなか楽しい。

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 青木さんは無名、有名を問わず(商売抜きで?)昔の自筆日記を収集しています。ある日、歌人で国文学者でもあった窪田空穂の日記や肉筆原稿が古書市場に出ているではありませんか。「誰が売ったのか」と義憤さえ感じて落札しましたが、この仕入れには次の展開が待っていました。...「窪田空穂日記のこと」

 外国からの古い絵葉書1束を仕入れたが、中にあった2枚の差出人が分かりません。なぜか気になる。消印の日付、地名、崩し字の1字署名から、様々な年表などを調べて判明した差出人は、永井荷風だった。...「外国絵葉書」

 などなど。わたしは読んだことがないか、名前を初めて知った作家の本にまつわる話もたくさん出てきて、日本の近代文学という世界の裾野の広さに思いをはせることができます。

 何と多くの人びとが文学に情熱を燃やし、名も残さず消えてゆき、しかし足跡が古本として世の中のどこかに眠り、また巡っていることか。ちょっと感動ものです!

 同時に考えたのが、筆者である青木さんのこと。一つの職業に、長く真面目に取り組んだ人には、いつの間にかたくさんの宝物が集まっているのだと思いました。

 青木さんは古書店主ですが、どんな仕事でもそれは同じなのではないでしょうか。当の本人が、自分の歴史のどこかに眠る宝物に、気づいているかどうかは別として。と書いて、自らを省みようとしたところ目が回り始めました。これはつまり....

 かなり麦焼酎が効いてきたので、早めに切り上げます。なにしろ正月2日なので、お許しくださいww。そういえば青木さんの別の本について、9月にも書いています。

                 

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