ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ホキ美術館について

4日間にわたり、仕事も放り出して、愛知から東京へと回ってきました。そして帰り着くと、<国境の長いトンネルを抜けると雪国であった>...とまでは言わないけれど、北陸は冷たい雨が降る冬の始まりに変わっていました。 必要があっての遠出。そこに組み込ん…

春乃色食堂

山から雪の気配が漂い始める北陸の晩秋。色鮮やかな落葉が終わったころ、枝先に残る木守柿が、ぽっと火を灯したように目に入ります。 今日、些細な仕事で山沿いにある小さな町に出かけました。用事を終えると、冷たい雨が上がっていたので街中をぶらぶら歩き…

本についての 美しい本 〜「モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」内田洋子

本について書かれた美しい本。 文春文庫の新刊「モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」(内田洋子)を簡潔に表すなら、わたしにはこの言葉以外にありません。もちろん「美しい」のは本の造りではなく、書いてある中身です。そして歯切れのいい文章も…

お絵描きの近況

先月から、油の絵筆を持ってF10のキャンバスにしこしこ再開しました。下塗り段階で、今は大まかな色のイメージを固めているさ中です。描いているのはモズの巣。地元のバードウオッチセンターに展示してあるのです。 今はこんな具合ですが、これでは抽象画み…

生きることの哀しみ 温かさ 〜「泥の河」「蛍川」宮本輝 

デビュー作には作家のすべてがあると言うけれど、「蛍川・泥の河」(宮本輝、新潮文庫)を読んで確かにその通りだと思いました。 「泥の河」という短い小説は、昭和30年の大阪の場末を舞台に、一人の男のあっけなくも悲惨な死から物語が始まります。のっけか…

小春日和

<小春日和> 死んだ夏の虫を 低い太陽が温めている あいもにくしみも漂白した空の高さ 地の底で 蒼い静脈がひとすじ ひそかに切れた 遠い山あいの窪みで 雲を映す水面(みなも)が 小さく波立つ だれも見ない だれにも聴こえない けさ郵便受けに絵葉書が届…