ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

日日雑記

チャットGPT 話しかけてHALを思い出した

チャットGPT。最近、やたらニュースで取り上げられるAI(人工知能)の会話機能で、アメリカの「OpenAI」という会社が開発して無償提供しています。論文やレポート、読書感想文など、チャットGPTに「書いて!」と頼めば即座に応えてくれるので、大学などでも…

旅路の途中から

昨年11月、落葉が終わるころから長い原稿の仕事が始まり、気づけば桜の開花宣言が聞こえ始めています。 本腰を入れて原稿に向かうと、24時間が仕事を中心に回り始めます。実際に文章を書いている時間は、1日8時間であったり、2時間であったり、全く書かない…

たまめし 〜食の記憶・file2

たまめし。 ちょっと上品ぶれば「卵かけご飯」。小皿にたまご割って、醤油入れて箸でかき回し、熱々のご飯にかけて、またかき回すあれです。 小学校2年だったか3年だったか、朝起きるとお腹が痛くて学校に行けず、母に近所の開業医に連れて行かれました。 顔…

あすはこれが食べたい!

昨年11月に長丁場覚悟の仕事を引き受けて、若いころのような馬力はないから、自分を追い込みすぎないようにやってきました。幸い、頭を掻きむしったり、ため息ついたりしながらも仕事を積み上げ、ようやく半ば近くまで辿りつきました。 自分を追い込み「すぎ…

カツ卵とじ定食 〜食の記憶・file1

1976年4月、わたしは早稲田大学教育学部英語英文学科に入学し、東京都大田区南馬込1丁目にある、老人夫婦宅の離れ6畳1Kに暮らし始めました。2023年の今から、遡ること47年前のことです。 下宿代は月15,000円。プラス電気、ガス代。仕送りは6万円なので、差し…

実はよく分からない、事実と虚構

長い原稿を書き始めると、いつ戻れるか分からない旅をしている気持ちになります。こう表すと少々気取っているようですが、実態は、旅程は描けても、すぐに資金が尽きて途中で呻吟する貧乏旅です。 資金が尽きたなら、稼ぐしかない。具体的には追加取材を繰り…

正月に、飲んで包丁を研ぐ

面白い小説は、例外なく脇役が魅力的です。悪者であれ善人であれ、主役を生かすのは脇役ですから、彼らがくっきり描かれているほど、その対比で主役が際立ちます。 題名を忘れてしまったのですが、北方謙三さんの時代小説にちょい役で出てくる研師がいます。…

素描とメイキングの画廊 〜くーのブログ個展

連日の仕事の息抜きに、ふと、一昨年から描いた素描を紹介させていただこうかと思いつきました。ささやかな<ブログ上の個展>。出品者としては会場費も額装費も必要なし!。うん、そこに関してははいいかも。 絵は素人のお遊びゆえ、未熟な点はご容赦くださ…

ふと目にした北鎌倉、祈りの光景

雨の鎌倉を訪ねたのは1年前でした。 名古屋、東京にそれぞれ用事があって高速バス、新幹線を使って回りました。用事といっても仕事ではなかったので、余裕を持った3泊4日。2泊した東京では美術館巡りを1日、もう1日は小雨の中、30数年ぶりに鎌倉へ。 北鎌倉…

柿を齧って思いをはせる 〜柿の文化史

80歳をとうに越えた農家の叔父が、軽トラを運転して柿を届けてくれました。これから雪が降ると、白い景色の中に鮮やかに色映えるのは柿です。わたしにとっては冬の初めの見慣れた景色でありながら、どこか懐かしい点景。 江戸時代から、越中の農民は飢饉に備…

秋の譜

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。 あまりにも知られた、川端康成「雪国」の冒頭。作品のこの入り、続くセンテンスと一体になることで、見事な存在感を獲得しているのです。 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号…

ひと鉢のバラとことしの秋

「今年の秋に剪定したものを頂戴!」 Kがわたしの投稿にコメントしたのは、昨年の初夏のころでした。Kもわたしもけっこう昔からのフェイスブックユーザーで旧友。前年の秋に剪定したツルバラの枝を、挿木して育てた我が家の写真を見て、Kが書き込んだのでし…

秋晴れの道 〜信州へ日帰りツーリング

朝、目を覚ますと今日も秋晴れ。家に籠るのも飽きた...と思ったら、曜日を気にせず遠出できるのが、引退したじじいの特権です。財布とスマホとマスクさえポケットに入れれば準備完了。あ、まずは顔を洗って。 紅葉には早いけれど、実りの秋です。山間地は蕎…

あいの風とウオーキング

目覚めると、夏のように影が濃い日差し。食パンと苦いコーヒーで朝食を済ませ、箪笥から仕舞ったばかりの半袖を取り出す。歩いて海へ。 10月半ば。風が肌を撫で、稲刈りの終わった田が広がる。既に初雪の知らせが届いていた北アルプスは今日、微かなシルエッ…

くーの文章講座? いや酔ったついでの戯言

このブログをよく訪ねてもらうともこ (id:jlk415)さんから前回、こんなコメントを頂きました。 「美しい」「感動した」などの言葉を使わずにどう表したらいいものか、考えがなかなか浮かばない。 その思い、よく分かります。わたしがいつも気にかけているこ…

一語多義の豊かさについて愚考する 〜「源氏物語」瀬戸内寂聴訳その9(番外編)

書庫であり、書斎であり、アトリエでもあり、見方を変えれば整理不可能なあきれた物置、そして夜毎独り呑みの空間である6畳の部屋。そこにある机上、および手が届く範囲には常時4、50冊の本が積まれているか並んでいます。未読のいわゆる<積読本>がある一…

最先端の図書館と昭和の町の図書館

巨大図書館で思い浮かぶのは日本なら国立国会図書館ですが、個人的にはもう1館、紀元前に創立されたエジプトのアレクサンドリア図書館です。ギリシャ、ローマ時代の学術のシンボルとも言える古代施設でした。 なぜそんな図書館が思い浮かぶのかは、たぶん...…

絵を描いて、歯痒く、面白く

絵を描く面白さって何だろう。 よく自問してみるのですが、これがなかなか難しい。そもそも表現行為の「面白さ」とはどんな要素で構成されているのかー、なんて考えること自体が興醒めで愚かなことなんだけど。 ところが分かっていながら、また考えてしまう…

テロルが残したもの

「新盆を迎えた人」とは、この1年間に亡くなり、初めてあの世からわが家に戻る人のことです。それぞれの家が送り火で、ご先祖さまたちを再びあの世に送ればお盆が明けます。 まさか今年、新盆を迎える人の中に加わると想像もしていなかったのが安倍晋三元首…

今日あった3つのいいこと

今週のお題「最近あった3つのいいこと」 最近あった3つのいいこと 玄関の郵便受けに、町内のラジオ体操の案内が入っていました。 わたしが暮らす近隣は、夏休みになると近くの公園で朝のラジオ体操が始まります。近年は子供だけでなく大人、とりわけ高齢者の…

まだ蝉の鳴かない夏

早い梅雨明けと猛暑。昨日から台風の雨で一服しましたが、追いつけないのが蝉です。 雨は夜半にあがって曇り。午後、陽が差し、風は心地良い。台風で猛暑はひと休み。渇水が心配された地域には、恵みの雨になりそうでよかった。 今年は6月から35度を超え、真…

最後のコラム

梅の読みは「うめ」または「ばい」だ。雨を付けて「つゆ」と、例外的な読ませ方をするのが梅雨である。手元の歳時記によれば、梅の実が黄熟するころだからその字を当てるという。 昭和40年代まで母が梅干しを作った。風通しのいい納屋の土間に、陰干しされた…

永井荷風の「断腸亭日乗」と、今日

昨日から、わたしが住む地も梅雨入りしました。 今朝は午前6時起床。なぜか、あまり思い出したくないかつての上司が出てくる夢を見て目が覚め、眠れなくなりました。こんな早起きは久しぶり。 曇り、ときどき細かい雨あり。 昼まで絵を描き、午後は買い物。…

短信

くーの墓が、完成しました。 花壇の底に散骨し、土で埋葬。園芸店で買った花苗を植えました。 夏には、満開に広がるでしょう。もう、来年はどんな花を植えようかと、そんなことまで考えています。 なんだか少し、気持ちの整理がついて、新しい時に入っていけ…

墓を積む

先週から、筋肉痛に苦しみながら没頭していたのはレンガ積みでした。 一昨年11月に逝ったオスのラブラドール・くーの墓を積もうと思い立ったのです。単なる墓標ではつまらないので、花壇を作って墓にし、土の中にくーの骨壷を埋葬しようと考えました。 15歳…

ブログ開設3年の節目に

ふと気づけば5月23日、このブログを始めてちょうど3周年の日になりました。 組織の肩書きから離れて3年、ブログを通じて思いもしなかった方々に出会え、コメントまでいただくことを幸せに思います。みなさん、ありがとうございます。 今年も庭のサクランボが…

春のぶらぶら、「螢川」散歩

今日は朝からウオーキングシューズを履き、車で4週間に1度通っている循環器内科へ。過労で発症した不整脈の持病があって、ここ10年近く薬が欠かせません。たぶん死ぬまで。 診療後、街中の有料駐車場に車を入れ、川べりの散歩に出かけました。 私が通う医院…

新年度、また牛歩の歩みで

私の住む地でも、ようやく桜の開花宣言が出ました。と言っても、うちの庭のソメイヨシノが咲き始めるのはこれからで、赤みを帯びて膨らんだ蕾は、まだ一輪も開いていません。去年より1週間遅い。今日から、新しい年度、令和4年度が始まりました。 現役を退い…

あかりをつけましょぼんぼりに

あかりをつけましょぼんぼりに…と、今日は桃の節句。高齢者二人世帯のわが家にも、お雛様が飾ってあります。高校を卒業して大阪の大学に行き、今は2人の子の母になって東京に暮らす、娘の雛飾りです。お雛様を見ながら老人が思うのは、 光陰矢のごとし。 こ…

ゆっくり逝こうぜ(タイトル借用です)

今日から3月に入り、いろいろと身辺に区切りがつきました。 一つは新聞のコラム。週1本といえども疲れが溜まり、早々に引退したいと以前から告げてありました。長く在籍した会社からのオファーなので執筆を引き受けたものの、3年目に入ったころから息切れが…