ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

小さな美術館とわたしの絵

 先週末から、6速マニュアルのわが脚..ではなく車を駆って、長野県の安曇野を巡ってきました。個人的な用件があっての1泊2日でしたが、2日目はフリーだったので、久しぶりにツーリングを楽しみました。

 長野はもちろん、日本各地で35度を超える猛暑の中。目指したのは南アルプス、高さ2000メートルの美ヶ原高原でした。ビーナスラインと名付けられた道路があって、この標高までマイカーで登れる場所は、日本にそうないと思います。

 クラッチ踏んでガチャガチャと、主に2速と3速を使い分け、登り切れば気温23度。涼しい!。雲上の高原には彫刻の美術館や道の駅もあります。わたしは早い時間に出たのでそれほどではありませんでしたが、駐車場は午前でほぼ満杯。食べ物のお店(特にソフトクリーム)は長蛇の列。帰路は、これから高原を目指す渋滞を横目に下山しました。

 そして立ち寄ったのが豊科近代美術館。松本市と安曇野方面には、いわさきちひろ美術館など小さな美術館がたくさんあります。メルヘンチックないわさきさんの絵は、特に見たいと思わないし、美術関係はパスしてよかったのですが、猛暑の市内を運転中にたまたま案内標識が目に入って立ち寄りました。

 前庭にブロンズが立つ、雰囲気のある小規模建築。常設展は地元を代表する近代彫刻家と、森鴎外ゆかりという画家の2人の作品が展示されていました。どちらもとうの昔に故人で(だから現代でなく近代美術館)、もちろんわたしは初めて知る作家でした。

 他に来館者はなく、貸切の静かな時間。代表作のほか東京芸大の学生時代の作品もありました。

 大美術館が主催する内外の人気画家の作品を集めた企画展もいいけど、地味なこういう展示は、妙に心に尾を引きます。知らない土地の歴史と、そこに生きた人の精神に触れる気がして。

 彫刻にしろ絵画にしろ、日本は明治以降、長い歴史と蓄積を持つ西洋美術を必死に取り入れ、日本人の感性で作品を作り続けてきました。高橋由一、黒田清輝など美術の<表街道>の有名どころはみんなそう。

 その奔流の中で、長野の安曇野に生を受けた2人が生涯にどんな作品を残したのか。一点一点を見ながらひっそりした館内を歩くと、世界の中の日本の姿、そして安曇野の風土がじわりと迫ってきました。

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 絵といえば、昨年末に描きかけの油彩をこのブログで紹介しました。F10のキャンバスに、一昨年秋に着手した鳥の巣です。ちょっと再録。

 2022年春ごろ

 2022年12月

 さてその後、

 少し進んで現在はここまで。

 あまり進んでいないのは、途中に仕事が忙しくて5カ月近いのブランクがあったためです。先月から再び絵筆を持ち、なんとか下絵(登山ならベースキャンプ)は完成しました。

 これからようやく頂上アタックに入り、完成に向けて全体を描き加えます。絵の具を重ねて絵肌と色彩を整え、もっと線の細部も突き詰めて存在感を出したいなあ。

 実物の鳥の巣(モズの巣です)は、海岸沿いの潟にある鳥の観察施設の展示品で、いろいろな角度からたくさん写真に撮ってあるのですが、描いているとやはり写真では納得できない細部が出てきます。今日も車を運転して施設に出かけ、しげしげと実物を眺めてきました。

 筆を持ちながら、いつか「あ、絵の神様が舞い降りてくれた...」と感じる瞬間に出会えたら、自分なりにうれしいのですが。年内の完成を目指して、相変わらずの牛歩で進みます。