ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

田舎のランチにご招待 〜オーベルジュ「薪の音」

 真昼といえど太陽の位置が低い、晩秋の小春日和。見渡せば、里山は紅葉と黄葉が、斜めからの光に輝いていました。

 ちょいとばかり早いけれど、今年も頑張った自分にご褒美と、車を飛ばしてのどかな中山間地の小さな集落にあるお店へランチに出かけました。ご報告しながら、これをお読みのみなさまを招待し、一緒に楽しめたら良いのですが。

 富山県南砺市城端にあるオーベルジュ「薪(まき)の音」は、古い農家をリフォームしたホテル兼レストラン。宿泊は3室しかないので3組限定で、宿泊客が出発した後のランチのみ、お客さんを少数受け入れます。

 農家が肩を寄せ合うような集落のまわりは、刈り取りの終わった田畑と山並みばかり。対面通行絶対不可の、落ち葉に覆われた道の脇に駐車場があります。少し歩けばすぐにお店の玄関で、看板はありません。

 こんな日は、山口百恵の「秋桜」を思い出します。秋桜を「コスモス」と読むようになったのは、この歌からだとか。それはそれとして、手で戸を開けて中に入りました。

 光射す玄関土間。暗い奥が、店内です。席に案内してもらうと、年代物のテーブルに置かれた花が出迎えてくれ、向こうに中庭が臨めます。テーブルは大きな一枚板だったように思いますが、とくと観察!..しませんでした。う。

 まずビール。といきたいところ。しかし車なのでノンアルコールビールで。前菜の一皿はサーモン、寒ブリ、チーズなど9品の燻製でした。

 白と緑、お好みのソースでいただきます。

 わたし的には左下のナチュラルチーズが1番で、やっぱり本物のビールか赤ワインがほしくなりました。うーん、池波正太郎に倣えば、手下を連れて馬か小舟でくるべきであったわ。

 それぞれの燻製の「顔」を見て、みなさんならどれに食指が動くでしょうか。

 

 地場野菜のサラダ。ガラス容器はミルクとゴボウの温スープサラダです。研いだ包丁でサクッと切られた根菜の歯触り、すりおろしたニンジンの甘さをご賞味ください。お好みで左上の自家製ドレッシングを。

 みなさまに想像力ばかりを強いて申し訳ありません...。

 そして青野菜スープ。紅ズワイガニの一皿と続きます。

 焼いた紅ズワイガニの下はタラ、ソースの下に白子が隠れています。

 自家製フランスパンと、よもぎパンを一緒にいただきました。

 メーンの肉料理はステーキ、能登牛です。当然ながらエージングは見事で、赤くても血の生臭さは皆無です。

 ここで、ご飯と味噌汁も出てきます。さて、お店の名前を思い出してください。

 「薪の音」

 地元の有機・無農薬栽培のコシヒカリを、かまどに薪を燃やして炊き上げてあります。ちょっと拝見。ところで言い忘れていましたが、フレンチのお店です。お箸でいただくフレンチ。

     

 ご飯は普通、小、極小から選べます。ここに至ると結構満腹になっていて、わたしは小をチョイス。まあ「大盛りください」と言っても、笑顔で対応してもらえそうですが。

 お店がある南砺市には合掌造りの世界遺産・五箇山があり、山裾の一帯は昔から柿の産地です。ということで、デザートは甘柿を二つに切ってくり抜いた一品。ちなみに、ヘタを残して全て食べられます。ほどよい苦味のコーヒーと一緒に。 

 すでに書いた通り、「薪の音」は1日3組限定で泊まれます。部屋によって一人2食付3〜4万円前後。大都市圏からの来客が大半で、3か月先までほぼ予約で埋まっています。夜と朝は宿泊客に食をサーブし、昼のみ一般の人を受け入れますが、これもなかなか予約が取りづらい。

 オーナーはシェフなので、食をメーンにした<隠れ家ホテル>です。ランチは2時間のコースで5000円ほど。内容を思えばリーズナブルで、久しぶりに満足できました。

 さて、日常に戻り、明日の昼は冷凍庫のドライカレーを「チン!」かな。

 最後にお店のページにリンク貼っておきます。訪ねるのは難しいと思いますが、少しでも旅の気分を味わっていただけたなら。

makinooto.co.jp