ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

ノンフィクション

こんなにも楽しい古書の世界 〜「古本屋控え帖」青木正美

令和最初の正月、久しぶりに雪のない中で初詣に出かけ、年末に地元の古本屋で仕入れてきた本を、ぽつりぽつり拾い読みして過ごしています。この時期は子供たちも家に帰って賑やかになり、ゆっくりページをめくる時間が意外にありません。気が向いたとき、さ…

出版が華だった時代 〜「ベストセラー伝説」本橋信宏

夕陽の向こうに消えていった懐かしい出版物とそれを作った編集者たちの物語です。 という冒頭の書き出しに惹かれて、つい買ってしまったのが「ベストセラー伝説」(本橋信宏、新潮新書)です。今は消えてしまったか、見る影もないけれど、かつて出版業界の最…

旧仮名遣いの魅力 この冬の課題^^ 〜「ヨオロツパの世紀末」吉田健一

先日、地元の古本屋さんをのぞいて見つけ、つい買ってしまったのが「ヨオロツパの世紀末」(吉田健一、新潮社、1970年)です。タイトルからして「ヨーロッパ」ではなく「ヨオロツパ」。本のシンプルな装丁、古びた佇まいも含めてなんだかカッコいいというか…

なぜ、という問い 〜「謝るなら、いつでもおいで 佐世保小六女児同級生殺害事件」川名壮志

一人の新聞記者のルポルタージュです。事件は2004年6月1日、長崎県佐世保市の大久保小学校で起きました。6年生の女子児童が、同級生の御手洗怜美(さとみ)ちゃんを多目的教室に呼び出し、後ろから首をカッターナイフで深く切って殺害。返り血に染まった女子…

私的ノンフィクションのすすめ

「事実は小説より奇なり」 という、使い古された言葉があります。わたしにとって、これには二通りの解釈があります。 1つ目。小説家がどんなに派手に想像力を働かせても、現実に起きる展開には及びません。地震、原発、スーパー台風、テロなどを描いた小説…

本を愛した5人の男 〜「古本屋奇人伝」青木正美

書物、雑誌、新聞と、出版物を取り巻く環境は1990年代半ば以降、劇的に変化し続けています。「紙の活字文化」という視点でまとめるなら、「衰退」という2文字があらゆる数字から浮かび上がります。衰退する世界の、日々印刷されて店頭に並ぶまでがメーンスト…

東アジアの外交戦略 昔のことですが.. 〜「新版 古代天皇の誕生」(吉村武彦)

4日かけて、昔習った日本史のおさらいをしていました。歴史に詳しい方には今さらと笑われそうですが、日本から中国の都・洛陽にまで使者が行き、後漢の光武帝からあの有名な金印「漢委奴国王」(漢の委わの奴なの国王)を授かったのは、西暦57年でした。これ…

新しい階級社会の出現 今とは 〜「上級国民/下級国民」橘玲

今週のベストセラー総合9位(2019.8.14集計)に入っていて、読んでみたのが「上級国民/下級国民」(橘玲=たちばな・あきら=、小学館新書)です。事前知識で興味をひかれたのですが、ちょっと参ったのが刺激的な言葉を連ねたカバー。「何だよこれ..」と、本を…

古書を通じた 文化史の醍醐味 〜「一古書肆(いちこしょし)の思い出」反町茂雄

古本屋さんに通う目的とは何でしょうか。新刊を安く買える。漫画、文学書を問わず、シリーズ物の揃いや全集が気軽に一括で手に入る。マニアなら、絶版書と出会える。得意なジャンルを持つ専門的な店(おもに東京・神田)で、初版本や色紙、昭和初期以前の雑…