ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

古本屋さん巡りの楽しさ満載 〜「東京古書店グラフィティ」池谷伊佐夫

 東京の古書店をすみからすみまで追究する究極のマニュアル本ついに完成!

 と、帯にうたわれているのが「東京古書店グラフィティ」(池谷伊佐夫、東京書籍、絶版)です。1996年に出た本なので、すでに四半世紀・25年前。今も、古書店巡りのガイドブックになるかどうかは微妙ですが、年月を経るにつれて資料的価値が生じる1冊だと思います。

 メーンは店内を俯瞰したイラストの数々。これが1店1店、特徴があって古書ファンは見飽きません。池谷さんはイラストレーターで、絵は本職。趣味の古書店巡りが高じてできあがった本なのです。

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     ↑早稲田 古書 文英堂書店(左)    同 安藤書店(右)

 ピックアップされているのは神田、本郷、早稲田の3大古書街のほか、中央線や私鉄沿線の特徴ある古本屋さん67店。「実際にはまだまだ紹介したい店はあるのだが、紙面や時間の都合上このような構成になった」(まえがき)。個人的には、学生時代に通った店もいくつか出てきて懐かしい。

 絵のタッチがほんわか温かく、矢印で示した店内の説明も「浮世絵の大型復刻本が随所にうもれている」「天井を横切る本 板が重みにたわんでいる」「両側には和本の山」(一心堂書店、早稲田)など、特徴をとらえてなんとも詳しい。

 併せて37篇のエッセイが収録してあります。「古書店巡りの作法」「装丁の力」など、本が好きなら思わずうなずいたり、笑ったり。

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 たいていの古書店が店頭においている、100円均一本についてのエッセイもあります。多くは雑本で掘り出し物は滅多にないのですが、求める本は人それぞれなので一般的には価値の低い本も、ある人には貴重だったりします。

 池谷さんは、古い随筆本を漁るのが楽しみだったとか。

 そしてここで紹介している本「東京古書店グラフィティ」も、わたしは大阪の店から100円で買いました。ただし店先の均一本の棚ではなく、ネットオークションなのですが。

 100円で出品されているのを見つけ、競争相手が現れて値がつり上がっても「絶対に落札する!」決意でした。ところが何と、締め切りまでに入札したのはわたしだけ。

 あれ。この本、人気ないのか。ものすごく得したような、残念なような。確かに好きでなければ、まったく興味のわかない類の本ではあるけど...。

 本のネットオークションには、100円本もたくさん出品されていて、田舎に暮らすわたしにとってはありがたい時代になりました。

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 ところで、この本、いまamazonで検索したら、何と古本100円以下でヒット。下にリンク貼っておきます。一方、yahooショッピングでは現在、1,200円から8,000円以上で複数売りに出ています。こんな値段の一喜一憂も、古本の楽しさです。