ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

あの人はわたしのすべてだった 〜「冷静と情熱のあいだ」江國香織

純粋、切ない、優しい、強い。弱い、かたくな、そして残酷。 どれも、「冷静と情熱のあいだ」(江國香織、角川文庫)の主人公<アオイ>について考えたとき、思い浮かんだ言葉です。そして全部、だれしもが持つ人の本性かもしれません。 単行本帯のキャッチ…

「レダと白鳥」〜レオナルド・ダ・ヴィンチの失われた傑作

空き部屋になった2階の子供部屋に、春から画材を運び上げ、画集など絵画関連の書籍もすべて移してアトリエにしました。いま、とてもお気に入りの空間です。 絵筆を持つと集中力が必要で、30分前後描くと限界に達するので、中入りの休憩を3、40分。その繰り返…

Curry カレー 〜食の記憶・file5

昭和は子供から大人まで、日本の国民食の一つがカレーライスでした。わが家では母が、わたしの好みに合わせて「ジャワカレー」(ハウス食品)の中辛を作ってくれた。 なにしろ田舎。フレンチやイタリアンは当然、和食という高級料理などつゆ知らず、カレーと…

壮絶な記録文学 300余の人柱 〜「高熱隧道」吉村 昭

壮絶な記録文学です。北アルプスの黒部峡谷は、峻厳な地形や豪雪が人の侵入を拒み続けてきた秘境。その峡谷に水力発電のダムを建設するため、人や資材を運ぶ隧道(トンネル)の掘削が始まりました。 ところが地下火山の影響で、掘り進むと岩盤温度は160度を…

食い道楽 日の丸お粥に中華そば 〜食の記憶・file4

ふと、ある食べ物が思い浮かび、無性に食べたくなる...こと、ありませんか? 若いころは洋食に中華、和食、創作料理、B級グルメまで、いろいろ情報を見て食べくなったものです。思い浮かべるだけで、口にじわっと唾がたまる感じ。体が、食物を求めていたのだ…