ノンフィクション&随筆
男と女とは、いったいなになのか。 「中原中也との愛 ゆきてかへらぬ」(長谷川泰子・村上護編、角川ソフィア文庫)を読み終えて、今更ながらそんな陳腐な問いかけが思い浮かびました。 もとより、人と人の結びつきは一つとして同じでない以上、この問いかけ…
初めて足を踏み入れた小さな町の図書館でした。左にカウンターがあり、奥に広がる閲覧室の手前、テーブルにリサイクル本が並んでいることに気づきました。リサイクル本は、在庫処分の廃棄本。「ほしい本があれば自由にお持ち帰りください」という趣旨です。 …
「武士」という言葉から、なにを連想するでしょうか。 合戦、切腹、武士道、男...。「武士は食わねど高楊枝」「武士の商法」など。改めて考えてみれば、いろんなイメージが浮かんで、模糊としています。小説の主役になる武士も、戦国の覇者から市井の剣客、…
イギリス出発前に少し読み、続きは帰国後にしようと、栞を挟んで机の上に置いた1冊が、「積ん読の本」(石井千湖、主婦と生活社)でした。ちなみに13時間のフライト中、エコノミークラスの狭い座席に呻吟し、行きは東野圭吾さんの「幻夜」、帰りは伊坂幸太郎…
「死ぬなら、がんで死にたいんだよ」 と、いきなり知人に言われたら、あなたはどう思うでしょう。「縁起でもない」とか「がんはいやだ」とか、とっさに拒絶感を抱く人は、少なくないのではないでしょうか。 厚労省の統計で日本人の死因の1位はがんであり、2…
2月も下旬に入ったというのに、景色を白く埋めて今も降り続ける雪を、窓の外に見ながら思いました。蛮勇とは何か。 一か八かのギャンブルは、勇気でなく弱さの裏返しというのはよくある話。あるいは追い詰められた窮鼠が猫を噛むのは開き直りだけれど、開き…
春から50号のキャンバスに風景を描き続けて、一向に完成のめどが立ちません。心のエネルギーと時間を、延々と費やしています。 わたしの場合、何時間も一心不乱に描き続けることは到底できません。細部まで妥協しない写実を目指していると、こんをつめて筆を…
食べ物について書かれた文章の良し悪しは、簡単に判断できます。あくまで個人的基準によって、ですが。読んで食したくなるかどうか。目で文字を追いながら、口中に唾が滲んでくるようであれば名文です。 多少日本語として乱れを感じたとしても、評価は揺るぎ…
書架の奥にある(はずの)本を探すため、周辺に堆積した単行本やら文庫やらをよけているうち、つい目的外の1冊を開いてしまうことがあります。ページをめくり、そのうち、本来探していた本は後回しになってしまい。 「母なる自然のおっぱい」(池澤夏樹、新…
「磯田道史と日本史を語ろう」(文春新書)は、雑誌に掲載された12本の対話をまとめた1冊です。磯田さんと語り合うのは養老孟司さん、半藤一利さん、浅田次郎さん、阿川佐和子さんら。1対1の対談だけでなく、2、3人の専門家たちと語り合う対話もあります。 …
2022年秋にChatGTPが現れたことは、個人的にインパクトのある出来事でした。ちょっと試してみようと、ChatGTPにアクセスして詩やラブレターの代筆をリクエスト。そして生成AI(クリエイティブな人工知能)が創造した<作品>に、少なからず驚きと驚異を感じ…
文学作品を評するのであれば秀作、あるいは傑作という言葉があります。しかし「忘れられた日本人」(宮本常一、岩波文庫)は、フィールドワークに徹した民俗学の仕事。最初の1ページから惹き込まれ、読み終えて、これは紛れもない名著だと思いました。 昭和1…
<紙>の歩みをたどって日本の歴史を描く。そんな本はこれまでなかったのではないでしょうか。そもそも紙という素材、めったに表舞台で注目されません。だからこそ紙の視点から歴史を眺めると、思いがけない新鮮な景色が広がっていました。 「日本史を支えて…
秋。ほんの半月ほど前の9月17日、義父の四十九日の法要と納骨のときは、まだ真夏の陽射しに焼かれる墓地で、汗を流して読経を聞いたのに、秋分を過ぎたころから一気に秋らしくなりました。異常気象の夏もようやく過ぎ去ったよう。 朝の陽射しの暖かさを、あ…
5月下旬から2カ月近く、小学館が2007年から2009年にかけて刊行した「日本の歴史」を読み継いでいます。全16巻(+別巻1)のうち、今日は第10巻「徳川の国家デザイン」(水本邦彦)を読了しました。 旧石器から古墳時代を扱った第1巻「列島創世記」(松木武彦…
国語辞典の編纂、編集とはどんな仕事で、いかなる人たちが携っているのか。もし職業別人口分布の詳細統計があったなら(あるかもしれませんが調べていませんw)、国語辞典編集者は0%=誤差の範囲内=になってしまいそうな、マイナーな存在。そんな稀少生物の…
日本の通史を学び直したい...という気持ちが以前からあって、しかし、なかなか手をつける勇気が出ませんでした。 いつだったか百田尚樹さんの「日本国紀」(幻冬舎文庫、上下巻)をこのブログで紹介しました。これは一人の小説家の視点による通史です。主観…
自分を探す18歳 みんなが自分を探す81歳 以前、SNSで見つけて思わす破顔した標語(?)です。80を過ぎてしっかりした高齢者はたくさんいらっしゃいますから、けしからん!と言えばその通りなのですが、18歳より81歳によほど近い自分としては、もう少し長生き…
命まで賭けた女(おなご)てこれかいな 無名の人の、知られざる1句。川柳の句集「有夫恋」が異例の大ベストセラーになった時実新子さんが、平成6(1994)年4月号の月刊誌「文藝春秋」に書いたエッセイで、取り上げている1句です。わたしは思わず笑ってしまい…
図書館の奥に眠っていたこの本を、これから読む人はそう多くないでしょう。何人か、せいぜい何十人かもしれません。既に絶版で、ネット検索するも古本はなかなかヒットせず。地元の図書館検索で探し、貸し出し可の1冊を見つけました。 「二人の炭焼、二人の…
おそらく10分に1回くらいは、にんまり頷いていました。30分に1回くらいは、笑い声をあげていたかもしれません。 たまたま、知人と時間待ちをしていたとき。文庫本を開くわたしの不審な笑いを、知人に聞きとがめられました。 「どうしたんだ?」 いや、それが…
本についてブログを書くとき、肯定的な心の発露による文章だけを書きたいと思っています。要は、心が動かなかった本、否定的な思いを抱いたものは取り上げない。作者が精魂傾けた仕事に、ちっぽけな個人の主観で異を唱えたくないからです。 「朝日新聞政治部…
よく行く書店に映画やテレビドラマの原作になった、あるいは近々公開予定の映画の原作を集めたコーナーがあります。眺めて「なるほど」とか「へえー、これを映像化?」とか。もちろん「どんな小説なんだろう」と、想像が広がる未読作が圧倒的に多いのも楽し…
宮城県北東部の石巻市は、太平洋に面した人口13万6千人の市です。沿岸部は漁業や養殖、水産加工業が盛んで、北部にかけてリアス式海岸の複雑な地形が続いています。 その石巻市で1912年(大正元年)に創刊され、石巻と東松島市、女川町をエリアに読まれてい…
悠久とか壮大とか、そんな形容がちっぽけで使えなくなるのが最先端の宇宙論です。「なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論」(野村泰紀、講談社ブルーバックス)は、理系科目を高校入学と同時にあきらめたわたしにさえ、ぞくぞくするような興奮を与え…
もし巨大な旅客機を操縦中に、全電源が失われ、あらゆる計器類が止まり、操縦桿も含めた全てが機能を失ったらどうなるでしょうか。東日本大震災の福島第一原発は、突然そうした状態に陥ったのです。 しかも原発の場合、最悪のシナリオは単なる墜落では済みま…
ロシアによるウクライナ軍事侵攻が起きなければ、手にすることはなかったであろう1冊が「物語 ウクライナの歴史」(黒川祐次、中公新書)です。とてもいい勉強になりました。読みながらつい、このころ日本はどんな時代だったかと、いちいち並置してしまうの…
「これは面白い○○だなー」 読みながら何度も心の中でつぶやき、つぶやきながらもどかしかったのは、「○○」に当てはめるべき言葉が見つからないことでした。評論、随筆、エッセー?。どれもぴったりきません。小説を取り上げているけれど書評とは言えないし。…
新型コロナウイルスのパンデミックは、人びとの生活を一変させました。自粛、リモートワークなど、さまざまな言葉で新しい日常を切り取ることができますが、一つの言葉の背後には異なる事情を抱えた千差万別の暮らしと人生があります。 「東京ルポルタージュ…
わたしは言語学を学んだこともなければ、日本語を研究する趣味もありません。しかし、三浦しをんさんが国語辞典編集者の地道で味わい深い喜怒哀楽を描いた小説「舟を編む」などは、心底楽しみながら読みました。<ことば>というものに少し、興味をそそられ…

