ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

補遺 〜ロンドンぶらある記・最終回

8月下旬から9月初旬にかけてのロンドン滞在は、漠然とだけれど、どこか深いところで自分を変えてくれた気がします。たくさんの絵を見たからとか、観光名所を巡ったからではなく、短期間とはいえ日常生活に身を置き、雑多な現実を受け入れて対応した経験が、…

読書する女は危険である 〜ロンドンぶらある記⑩

ロンドンのガイドブックによると、ナショナルギャラリーから南に延びる大通りを数分歩くと、右に折れる小さな横丁があります。それがセシル・コート通り。古書店が軒を連ね、「ハリーポッター」に出てくる<ダイアゴン横丁>のモデルなんだとか。 「ハリーポ…

白い絶壁 セブン・シスターズ 〜ロンドンぶらある記⑨

特に風の強い日ではなかったのですが、イギリスは天候が変わりやすく、夏でも晴れの30分後には雲に覆われ、雨風が吹き付けます。波が白く砕けて打ち寄せ、ヒース(荒地)の草が風になびく。セブン・シスターズを訪ねたのはそんな日でした。 ロンドンから南へ…

描かれた女性2人になにを見るか 〜ロンドンぶらある記⑧

ドイツ文学者の中野京子さんが、独特の視点で名画を解説した「怖い絵」という本がシリーズ化(角川文庫)されています。わたしは未読ですが、「怖い絵 泣く女篇」を書店で手に取ったことがありました。カバーに使われている絵が印象的だったで、その章だけざ…

英国にも新宿にもひまわりは咲き 〜ロンドンぶらある記⑦

ナショナル・ギャラリーを訪れる人で、この絵が目当てという人はかなりいると思います。フィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」。 環境保護団体の青年というか少年たちが、この作品にトマトスープを投げつけたのは2022年。同じ団体はその前、ルーブル美…

ネーデルランドの絵描きたち 〜ロンドンぶらある記⑥

ロンドンのナショナル・ギャラリーは、入場口のあるセインズベリー館と、空中の通路でつながった本館があります。セインズベリー館は西暦1500年までの絵画、本館は16世紀以降という作品構成で展示されています。 いったん入ると、展示室は前後左右に延々と連…

聖アンナの微笑みに魅せられ 〜ロンドンぶらある記⑤

正面に古代ギリシャを模したコリント式円柱の列。ロンドンのナショナル・ギャラリーは、トラファルガー広場を前庭のように持つ、古典主義の壮大な建築です。 大英博物館が世界の文化財の殿堂なら、こちらはパリのルーブル美術館に迫る絵画の宝庫。13世紀以降…

大英博物館で広重に出会う 〜ロンドンぶらある記④

浮世絵で一番好きな作品を問われたら、幾つか思い浮かんで困ってしまうけれど、その「幾つか」の中に確実に入るのが広重の「蒲原」です。正確には、東海道五十三次之内十六「蒲原 夜之雪」(かんばら よるのゆき)。 風のない夜、しんしんと降り積もる雪。遠…

大道芸あれこれ 〜ロンドンぶらある記③

トラファルガー広場は、イギリス最大の美術館「ナショナル・ギャラリー」に面しています。広場南は官庁街、北はピカデリーなどの歓楽街が広がり、連日多くの観光客でにぎわっています。ビルの間からビックベンも遠望でき、石段に腰掛けてひと休みし、もぐも…

古きイングランドを求めて 〜ロンドンぶらある記②

コッツウォルズ(Cotswolds)は、ロンドンから高速道路を使ってバスで1時間半ほど、イングランド中央部に広がる丘陵地帯です。中世以降、高級羊毛の産地として栄えましたが、産業革命とともに次第に衰退。やがて忘れられた田舎になりました。 現在、コッツウ…

愛書家であるほど 救われる1冊 〜「積ん読の本」石井千湖

イギリス出発前に少し読み、続きは帰国後にしようと、栞を挟んで机の上に置いた1冊が、「積ん読の本」(石井千湖、主婦と生活社)でした。ちなみに13時間のフライト中、エコノミークラスの狭い座席に呻吟し、行きは東野圭吾さんの「幻夜」、帰りは伊坂幸太郎…

パブは楽しい でも金額にご注意を 〜ロンドンぶらある記 ①

覚悟はしていたけれど、9月になっても37度を超える日本の暑さ。羽田空港のビルを出たとたん熱気に包まれ、汗が吹き出しました。昨日(2025年9月2日)、2週間ぶりにロンドンから帰国しました。 ロンドンの緯度は北海道より北で、樺太と同じくらい。わたしの滞…