ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

大道芸あれこれ 〜ロンドンぶらある記③

 トラファルガー広場は、イギリス最大の美術館「ナショナル・ギャラリー」に面しています。広場南は官庁街、北はピカデリーなどの歓楽街が広がり、連日多くの観光客でにぎわっています。ビルの間からビックベンも遠望でき、石段に腰掛けてひと休みし、もぐもぐタイムに入る人もたくさん見かけました。

 わたし、ナショナル・ギャラリーに4日も通ったので、この近辺はけっこうお馴染みになりました。毎日朝から、広場入口付近に自前の音響装置を置き、伴奏を流して歌っている人がいます。時間帯によって人は変わり、みんな見事な歌唱力で日本人の男性シンガーも見かけました。

 これを大道芸と呼ぶのは適当でないかもしれませんが、歌うそばにドネーション(寄付)を募る箱を置いているから、やはり声の大道芸かな。

 広場で不思議に思ったのは、コンクリートの地面に黙々と世界各国の国旗をチョークで描く2人の若者。何時間後かにわたしが美術館から出てくると、バケツの水でチョークを洗い流しているところでした。

 そころが別の日、また朝から国旗を描いている。ん、いったい、これは何なのだ?。チョークの国旗を並べても、特にアートには見えないが。それとも現代アートに関する、わたしの感性が錆びついている?

 

 よく見ると、国旗の上に小銭が置いてある!。

 トラファルガー広場は、世界中から観光客が集まる場所。自国の国旗の上にドネーションを置いていく人がいるようです。なんとも意表をつかれた大道芸?でした。

 街中で大道芸に出会うのは、人が行き交う路上ではなく広場のような空間です。目的地まで地図アプリを頼りに歩くと、割とそんな空間があることに気づきます。ときに、大道芸を多くの人が取り囲んでいます。拍手、歓声。受けるには、大道芸人の喋りのスキルも必須と思われます。英語、理解できんかったけどw。 

 

 

 カフェやワインバーのテラス席が並ぶショッピングモールの中。3人がクラシック音楽のトリオを演奏していました。バイオリンが男性で、どっしり引き締めるチェロが女性という組み合わせがちょっと面白い。

 技量レベルは素人なので分かりませんが、聴衆との掛け合いが楽しそうで、ドネーションの皿に紙幣を入れる人もいました。

 

 

 さて街中や地下鉄の通路などで、座りこんでお金を乞う人をしばしば見かけました。ホームレスで乞食の人たちでしょうか。あえて「乞食」と書いたのは、彼もしくは彼女が、段ボールに「I'm hungry」と書き、食を乞うメッセージを示して座っているからです。そばにお金を入れる皿があります。

 これもある種の大道芸、職業かも。面白いのは「I'm hungry」で薄汚れていても、痩せた人をあまり見ないこと。もちろんそれぞれ、わたしには想像できない事情があり、生きるのは辛いのだと思うけれど。

 どんな社会にも光と影があります。実はわたし、こうした人たちが街中あちこちに、ふつうに座ることを容認する社会に、不思議な安堵を感じました。

 日本はあまりにも潔癖で、分かりやすい正論しか許容しない。白か黒だけ、そして白以外はグレーでも疑念なく糾弾する、息苦しい方向に流れている気がするからです。ホームレスの人たちも、ふだん目にしないエリアに追いやって忘れている。目に入らないものは存在しない、みたいな。

 国際比較において所得が低迷し、自殺者は突出するにっぽん...かあ。