ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

読書する女は危険である 〜ロンドンぶらある記⑩

 ロンドンのガイドブックによると、ナショナルギャラリーから南に延びる大通りを数分歩くと、右に折れる小さな横丁があります。それがセシル・コート通り。古書店が軒を連ね、「ハリーポッター」に出てくる<ダイアゴン横丁>のモデルなんだとか。

 「ハリーポッター」に思い入れはないけれど、ロンドンの古書街と知れば、わたし的に行かねばなりません。グーグルマップ片手に足を踏み入れてみれば、なるほど味のある通りでした。

 古書店だけでなく、骨董品、切手、古地図専門店から、絵を売るギャラリーが並んでいました。古書店も児童文学、音楽など専門がくっきり出ています。写真は東洋に関する古本と骨董品を扱うお店です。

 

 古書店の店先にはそれぞれ、日本の古本屋さんみたいに安い均一本のワゴンがあります。音楽が専門のお店だと、いろんな楽譜が並んでいました。う〜ん、この種の均一本ワゴンは、日本にないな。

 と、そんなことに感心してしまったわたしでした。日本に楽器を演奏する人はたくさんいるけれど、楽譜が均一本のワゴンに詰まっている光景に西洋音楽の歴史を感じ取ってしまう。

 たぶん均一本はたくさん出回っている名曲で、店内にあったのは手に入りにくい楽譜や音楽本だったのでしょうか。英語以上に楽譜が読めないわたしの推測です。う。

 

 

 さてギャラリーはこんな感じ↓ですが、ほしいと思う絵はなかったなあ。あっても、たぶん高くて買えなかったと思うけど。

 古い地図ばかり売るお店も面白かった。世界各地の古地図があり、眺めているだけで想像力が刺激されました。日本の地図はありませんでした。安土桃山時代に宣教師が母国に送った地図とか、あったら複製でも買ったのに。

 

 結局、古本は1冊も買いませんでした。いちおう大学時代は英文学専攻だったので、万が一、偏愛するサミュエル・ベケットの小説か戯曲のハードカバーに出会えたら買うつもりでした。いまさら改めて読まないけれど、遠い青春の記念碑として。

 そして願い空しく、わが青春の記念碑とセシル・コート通りで巡り合うことはありませんでした。

 

 ロンドンで買った本は5冊。4冊は訪れた各美術館の収蔵作品図録です。一般書と違い、この手の本は書店でも買えないので。唯一、街中の本屋さんで買ったのが、美術書のコーナーを眺めているうち目に入ったこの本でした。

 「WOMEN WHO READ ARE DANGEROUS」

 日本語にすれば「読書する女は危険である」。砕けて訳せば「本を読む女はヤバい」みたいな感じでしょうか。

 ルネッサンスから20世紀までのアート作品を俯瞰し、本を読む女性をピックアップ、そこに時代背景を踏まえた解説を加えて成り立っています。たぶん。たどたどしい読解力の拾い読みから推測するに。

 基本にある視点は、性差別なのかな。歴史を振り返れば、かつて聖書以外の文章、書かれた言葉は男のものでした。商売の契約書から文学に至るまで。18世紀だったかのフランスでは、小説を読む女性は「ふしだらな女」という烙印をおされたりした。(この部分、曖昧な記憶による記述です)

 そんな歴史を踏まえた美術の論考なのだろうと勝手に解釈し、ミケランジェロの絵から、マリリン・モンローがジェイムス・ジョイスの長大かつ難解な小説を読んでいる(←わたしの稚拙な読解力による)写真作品まで収録してあるし、見ているだけで面白く思わずレジに持っていったのでした。 

 

 こうして、日本のとある田舎にやってきた本たち。ある人の受け売りですが、読んだ本は既知の世界。そんな本ばかり積み上がっていてもつまらない。死ぬまで読まないかもしれないけれど、まだ未知の世界(しかも英語w...)がそばにあるということにも、本好きは幸せを感じるのです。