たまたまこれを書いている今日が12月24日で、たまたま「森崎書店の日々」(八木沢里志、小学館)という本を最近読んだのですが、ふと、「これはクリスマスイブにぴったりの小説だ」と思いました。一人だけのイブの夜、ページをめくれば、静かに心が潤ってきそうな。
ただしクリスマスはどこにも出てきません。東京の神田神保町にある「森崎書店」という古本屋さんを舞台にした物語です。ブックカバーに紹介してある「STORY」を一部削除して再録します。
恋人から突然、「他の女性と結婚する」と告げられた貴子は、深く傷つき、ただ泣き暮らす毎日をおくることになった。職場恋愛だったため会社も辞めることになり、貴子は恋人と仕事をいっぺんに失ってしまう。そんなとき叔父のサトルから電話が入る。叔父は妻の桃子に家出され、ひとり神保町で「森崎書店」という古書店を経営していた。叔父からの連絡は「店に住んで、仕事を手伝ってほしい」...

妻に逃げられたこのサトル叔父さん、よそにある家から店に通ってくるのですが、冴えなくて優しくて、なんとも憎めない人です。半ば強引に引き込まれ、店の二階で一人暮らすことになった貴子の方は、文学にとんと興味がありません。
常連さん、近くの喫茶店のマスターなど、積み重なる日常が貴子を癒していきます。そして本の世界の奥深さにも目を開かれ。貴子が古本たちのカビくさい匂いに囲まれて暮らしたのは、夏から翌春まででした。そして旅立ち。
決して忘れえぬ、大切な場所。
それが、わたしにとっての森崎書店だ。
この小説、世界50の言語で翻訳オファーがあり、英語版はすでに60万部を突破したとのこと。読んでその理由が分かりました。複雑にストーリーの枝葉を広げることなく、単行本で100ページに満たない長さ、そして「優しく人生を肯定する物語」(イタリアの出版社)です。
もう1作、同じほどの長さの小説が収録してあって、「桃子さんの帰還」。5年前に家出して行方不明だった、サトル叔父さんの奥さん、あの桃子さんです。
さて、これより男子厨房に立ちます。鶏肉にニンニク散らして塩胡椒して、オリーブオイル塗ってオーブンに入れよう。赤ワインでも飲んで焼き上がりを待ちますか。みなさま Merry Christmas!
anazon
