2021-01-01から1年間の記事一覧
最初に告白しておけば、25年前にひっそり書店に並んでいたこの本、わたしは1ページ目から最後までを、通読したことはありません。 買った当初は目次で全体構成を眺め(庭に関するエッセイ、詩、書簡のような断片、掌編小説、水彩画などが集められている)、…
昨日と打って変わって、肌寒い春の1日。 スーパーで買ってあった約100円ハンバーガーをチンして、コーヒーで朝食。昨夜書き上げたコラムを読み直し、少し手を入れて送信しました。ほっとする一方で「あとはどうにでもなれ」の、開き直りもあります。仕事の…
「JR上野駅公園口」(柳美里=ゆう・みり=、河出文庫)は、2020年に全米図書賞を受賞したことで、日本でも多くの人が手に取った1冊です。わたしもその一人で、柳美里さんの作品は初読でした。 いい作品が必ずしも売れると限らない以上、どんな経緯を経るに…
明治に生まれ育ち、大正から戦前にかけて青春期、壮年時代を過ごした一人の詩人の自伝に、なぜ妙な懐かしさを感じるのか。自分が生まれるずっと前の時代に、郷愁のような心の揺らぎを覚える不思議について、わたしはうまく説明できません。 詩人・金子光晴は…
二篇のエッセイが、妙に響きあって、心に残りました。どちらも、新聞に掲載された短い原稿です。 まず2020年5月25日、朝日新聞に掲載された青来有一さん(作家)の「暖簾は語る」。 年に数回は行くという、長崎県の温泉地の居酒屋の話です。 八十代の元気な…
又吉直樹さんの芥川賞受賞作「火花」には、次も読んでみようかと思わせる何かがありました。そして手に取ったのが「劇場」(新潮社)です。 帯のキャッチには「切なくも胸に迫る恋愛小説」。なるほど、ストレートにそのままの作品です。主人公の<僕>は、ア…
昨日は春分の日でした。仕事の一つである週1本の新聞1面コラムで、何を題材にするか迷ったとき、物色するのは<時事ネタ>か<季節ネタ>です。新型コロナや政治などの社会状況は時事ネタ。春分の日は、季節ネタですね。 昼が長くなって桜の開花が近づくころ…
東京の古書店をすみからすみまで追究する究極のマニュアル本ついに完成! と、帯にうたわれているのが「東京古書店グラフィティ」(池谷伊佐夫、東京書籍、絶版)です。1996年に出た本なので、すでに四半世紀・25年前。今も、古書店巡りのガイドブックになる…
当面の課題や締め切りをクリアして、ふっと息をついてビールを飲みながら、最近ついついハマるのが<戦国ixa>というオンラインゲームです。負けると悔しい!...ので、強くなりたい。 そこにはクリック2、3回で簡単に課金、戦力強化できてしまう、ネット社会…
田舎住まいのうちには、2本の桜があります。1本は道路に面した狭い一角に植えた桜桃。サクランボがなるミザクラ(実桜)で、早咲きです。例年、彼岸のころ満開になるのですが、今年はやや早く、昨日あたりから開花し始めました。 いよいよ春本番は近い。 母…
10年前の2011年3月11日、午後2時46分18.1秒。この瞬間を境に、多くの人生はそれ「以前」と「以後」に決定的に分断されました。被災者でないわたしでさえ、めまいのような横揺れに驚いたあの瞬間からの数日、数週間、そして1年は忘れられません。 東日本大震…
わたしはお化けとか超常現象の類を、これっぽっちも信じません。確かに時には面白いけれど、フィクションの世界。と、分かっているはずなのに、実は怖がりなのです。頭で考えていることに反して、体が反応してしまう。 「冷たい校舎の時は止まる」(辻村深月…
もののけ姫の世界が蘇った ブログを通じた知人、レノンさんが「邂逅の森」(かいこうのもり 熊谷達也、文藝春秋)について記した文章を読み、思わず「なるほど」と膝を打つ思いでした。 もののけ姫かあ。この作品の世界観をこんなふうに分かりやすく言い切る…
もともと、二十歳前後の、しかも女性が書いたアイドル追っかけ小説に、わたしがついていけるはずもない。第164回芥川賞を獲得した「推し、燃ゆ」(宇佐見りん、河出書房新社)です。 同年代のみなさんのために少し事前解説すれば、「推(お)し」は動詞では…
読むつもりの本や雑誌は、しっかり机に積まれているのに、このところなかなか手に取る元気が出ません。文藝春秋3月号は、新芥川賞の「推し、燃ゆ」を読みたくて買いました。ところが新型コロナ第3波「失敗の本質」という特集が組まれていて、今はまずそち…
愛 ノートの一頁目は白紙。 ここにきみはいない。 一色真理さんという、詩人がいます。わたしは最初、真理を<まり>と呼んで女性だと思っていました。詩集「夢の燃えがら」(花神社、1982年)をむかし読んだ時、冒頭から数篇、詩の雰囲気からして女性で違和…
歴史小説は、信長や秀吉を代表とする戦国の覇者たち、あるいは彼らを支えた人物に焦点を当てるのが本流です。おなじみ、NHKの大河ドラマの原作になるような作品群。でも、普通は表に出てこない歴史の支流にも、魅力的な人物はたくさんいたはずです。 「のぼ…
雪深い地に住んでいるとはいえ、立春を過ぎれば新しく降り積もった雪も数日のうちに消えていきます。この時期からわたしの中では、春、満開の桜を待つ心が密かに芽吹きます。 圧倒されるような桜の名所はもちろんいいけれど、たまたま出合った公園に立つ1本…
在宅で細々と仕事をし、それも最近はけっこう暇で(う...)、昼は一人買い溜めした冷凍食品ですませています。まあ、わたしの食のレベルは現状、そんな具合です。 まだお気に入りの冷凍坦々麺とかパスタの在庫はあるのに、スーパーへ出かけたのは、PayPayで…
草食ではなくて肉食。若い男の体臭が、むんむん臭ってくる小説です。ただしライオンのような猛々しさ、かっこよさは微塵もありません。 汗、酒、煙草、そして浅ましさや愚かさ。冷酷になれないから、犯罪者にもなれない平凡さ。しょせん俺とうい人間はこうな…
お世辞にも几帳面とは言えない性格だから、本の整理がつかなくなって、ずいぶんになります。だからある本を探していたら、書架の奥から雑誌「文學界」昭和60(1985)年11月号が突然出てきても、なんら不思議はありません。 不思議なのは、なぜこの年のこの文…
前半を読んだ段階では、「盤上の向日葵」(柚月裕子、中央公論新社)をブログに書くかどうか迷いました。わたしの中でプラスよりもマイナスが上回る作品については、書かないことにしています。 何度か中断しながら読み続けるうち、後半から面白くなって、最…
レオナルド・ダ・ヴィンチというルネッサンス期の天才に、わたしは長く憧れと敬いの気持ちを持ち続けています。普段はそんなことを全く意識しませんが、自分がどうありたいかという基本のところで、無意識のうちにその生き方をお手本にしている部分が、間違…
「やめられない、とまらない〜」という、ビールと大変相性のいいスナック菓子の古典的コピーが、この本を読んで脳裏によみがえりました。頃よく日も暮れたので、さっそく飲み始めましたが、手元にリアル<かっぱえびせん>がないのは...痛恨の極み。 2016年…
思い返せばキャンバスの下塗りから始まり、この静物画と旅をしていたような5カ月でした。 やや感傷的な書き出しになったのは、描いている途中に老犬・くーが逝ってしまったからです。描き始めてから今日まで、まったく絵筆を持たなかった日は10日もないでし…
お笑い芸への愛情と切なさが、ひしひしと伝わってきました。愛情が深ければ苦悩も深く、文章からは文学への真っ直ぐな思いが漂ってきます。う〜ん、これは心に残る秀作ですね。 「火花」(又吉直樹、文藝春秋)を今ごろ読んで、褒め言葉を並べているのだから…
「ノーマンズランド」(誉田哲也、光文社文庫)を読みました...と書くと、すかさず「おいおい、前回こんなの4冊買いましたと、なんだかんだ言ってたのと違う本じゃないか!」と突っ込まれそうですが、はい、違うのです。申し訳ありません。まあ、寂れたブロ…
道路上の除雪がかなり進んだことに加え、今日は暖かかったので、車高が低い、しかも後輪駆動のマイカーでも大丈夫だろうと外出しました。車道はほぼアスファルトが露出していますが、路肩は除雪で積み上がった雪が壁になっています。一部は、2車線のうち走…
「むかしむかし....」で始まる、おばあちゃんの昔話。語りの前置きとして、各地の方言に形を変えながら伝わってきた、あるフレーズがあります。 ありしか なかりしか知らねども あったこととして聞かねばならぬぞよ これ、直裁で素朴で、かつ<物語>という…
意に反して、豪雪ブログに衣替えしてしまったこのところ。雪は午後に一段落し、久しぶりの陽射しがうれしい。白く輝いているのは、庭に出現した<プライベート・ゲレンデ>です^^。 雪かき作業は、当然のことながら排除した雪をどこに移動するかが大問題。…