2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧
架空の国の多彩な自然や民族、生き物たち、政治から医療の細部まで、現実世界を超えて創り上げ、これほど重層的な物語を描ききることに感嘆します。「鹿の王」(上下、上橋菜穂子、角川書店)をはじめ、「精霊の守り人」「獣の奏者」など上橋さんのすべての…
「小説すばる」1999年10月号で連載スタート。 頭ひとつ、出ていた。 という、短い1行が冒頭にあり、すぐ改行。「水滸伝」(北方謙三、集英社)の始まりでした。連載は2005年7月号まで続き、19巻、原稿用紙9500枚超の大作になりました。 味も素っ気もない1行…
先週、いきなり総合2位に食い込んだ「ノーサイド・ゲーム」が、春から盤石の売れ行きを見せてきた「一切なりゆき 樹木希林のことば」を抑えてトップに躍り出ました。文芸書が総合1位になるのは久しぶりです。私もさっそく読んで、レビューを投稿してあるので…
いま旬の一冊が、発売後すぐにベストセラーになった「ノーサイド・ゲーム」(池井戸潤、ダイヤモンド社)です。鮮烈な逆転劇、信頼していた人物の離反や敵対者が実は理解者だったなど、他の池井戸作品と共通する要素がいっぱいで、ファンにとっては「そこが…
千年も昔の夕暮れどき、闇が迫る京の都の外れ、百歳(ももとせ)とも見える乞食の老婆が、朽ちかけた卒塔婆(そとうば・そとば)にぐったり腰掛けています。顔は皺に覆われ、ボロをまとった姿からは垢と脂の酸い臭いが漂ってきます。 たまたま通りかかった高…
2007、2008年は、あまり明るいニュースがないですね。2007年1月に不二家が消費期限切れ牛乳を使ってシュークリームを製造していたことが発覚してから、次々と食品偽装が発覚。船場吉兆の女将「ささやき」記者会見、覚えている方も多いのでは。年金の未統合問…
面白いとか、感動したと言うより、胸に痛みが残る小説にときどき出会います。「蛇にピアス」(金原ひとみ、集英社文庫)はそんな一冊でした。文庫本で100ページ余りを駆け抜けて鮮烈。この作品を書いたとき、作者19歳。「才気あふれるデビュー作」などという…
8冊の文庫本「坂の上の雲」1〜8(司馬遼太郎、文春文庫)を目の前に置いて、途方に暮れています。この大作について、短い文章で何を綴ればいいのか。前回の稿で池井戸潤さんにかんして、「読めばとにかく元気をもらえる」と書きました。ふと、自分が元気をも…
池井戸潤さん、さすがに強い。「ノーサイド・ゲーム 」がいきなり総合2位に食い込み、単行本・文芸書部門ではごぼう抜きのトップに登場です。私はまだ読んでいませんが、情報を探すと「経営戦略室から左遷された男、しかもラグビー素人がラグビー部を立て直…
最初に読んだのがいつだったか、定かではありません。数年後、再読したくなったときに本が見つからなかった。部屋のどこかに必ずあるはずなのに、下手に本棚や周辺をひっくり返すと、収拾が付かなくなりそうであきらめました。仕方なく、翌日もう一度買った…
私は20年ほど前から、YAHOOカレンダーでスケジュール管理をしているのですが、過去を振り返るとき実に便利です。2010年、2009年の今日は何をしていたか、一発で分かります。会議とか訪問先とか、ほぼ仕事の予定ばかりですが、記憶が鮮明なものも結構あって懐…
新約聖書の福音書によれば、限りなく官能的な娼婦であり、しかも聖女でもあったというマグダラのマリア。一方、小説の方は「まぐだら屋のマリア」(原田マハ、幻冬社文庫)。まぐだら屋は、さいはてのごとき海の寒村にぽつりと建つ定食屋。そこにマリアがい…
季節は梅雨入り。じめじめした日が続いています。私は降雪地域に住み、夏も雪が残る北アルプスの稜線を遠望して暮らしていますが、梅雨時期は雲に山並みが隠れてしまうのが残念。でも冬の雪と梅雨のおかげで、年間を通して豊かな水に恵まれているのはうれし…
トマトは、たっぷり砂糖かけてかぶりつくのが一番、という人はあまりいないと思います。ゼロではないだろうけれど極めて稀、というところでしょうか。 さて、これは前回の東京オリンピックよりさらに少し昔の、トマトのお話です。 排気ガスと騒音をまき散ら…
思いっ切り当たり前で、ナンセンスな言葉を連ねてみます。 風、吹いている。木、立っている。ああ、こんな夜、立っているのね、木。 風が吹いても、雨が降っても、夜であろうと昼であろうと、木は枯れるか雷が落ちない限り、立っていて当たり前です。「ああ…
この稿で2011年まできました。3月11日午後2時46分、あの東日本大震災のあった年です。私は東北在住ではありませんが、不意に始まった、長いめまいのような揺れは今も鮮明です。NHKのヘリがとらえた津波の映像、そして原発。原発報道では日本のメディアより、…
この稿を書きながら、読んだ本をちらちら再読したりして、予想外の時間がかかりました。しかもほんの数年前の本を探し出すのに苦労したり。もっと部屋の整理しないとだめですね。分かってはいるんだけど...w 2014年(平成26年) 主な出来事 STAP細胞論文発表…
「新章 神様のカルテ」(夏川草介、小学館)は、地域病院で悪戦苦闘した若い医師・栗原一止(いちと)が、舞台を新たに患者と向き合い、巨大組織の権力構造の中でもがく「大学病院編」スタートとなる1冊です。こういう場合の決まり文句ですが、たとえ前作ま…
樹木希林さん、おしりたんていシリーズの2強は、今週も強いですね。特に樹木希林さんの「一切なりゆき」は、年間ベストセラーでも上位確定という感じです。 注目されるのが一気に3位にランクインした「俺、つしま(2)」。ネコを主人公にしたほのぼの系?コミ…
2016年(平成28年) 主な出来事 熊本で震度6強(4月) 障害者施設・津久井やまゆり園事件で19人死亡(7月) リオ五輪で日本のメダル41(8月) 天皇陛下退位のお気持ち表明(8月) アニメ「君の名は。」大ヒット(12月) 【総合】 ①「天才」石原慎太郎 ②「お…
2018年から遡って、順次、各年ベストセラーを振り返ります。年間ベストセラーのデータは、TOHANが1990年以降を公開しているので利用させてもらいます。詳しいデータを知りたい場合は、そちらを参照してください。1980年代以前のデータもネット上にいろいろあ…
既に読んだ方には、あらためてその魅力を語るまでもない「舟を編む」(三浦しをん、光文社文庫)。読んだ後、久しく開くことのなかった国語辞典を本棚の隅から引っぱり出し、埃を払って「女」という言葉を繰ってみました。 いや待てよ、この繰るという言葉使…