ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2012、2011年 ベストセラー回顧

 この稿で2011年まできました。3月11日午後2時46分、あの東日本大震災のあった年です。私は東北在住ではありませんが、不意に始まった、長いめまいのような揺れは今も鮮明です。NHKのヘリがとらえた津波の映像、そして原発。原発報道では日本のメディアより、ネットで見たニューヨークタイムスの1面見出し、「Desperate Attack(絶望的な挑戦)」の大文字が目に焼き付いています。日本のメディアはどこも、こんな直截な言葉を使う勇気がありませんでした。

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(2017年10月撮影。人気のない福島県浪江町の浪江駅前にあった地図。震災前の地図ですね)

 さて2012年と2011年はどんな本が売れたのでしょうか。この2年は「謎解きはディナーのあとで」がブレイク。タニタの社員食堂も話題でしたね。

 

 2012年(平成24年

主な出来事 東京スカイツリー開業(5月) ロンドン五輪で38個のメダル(8月) 尖閣諸島国有化で中国と関係悪化(9月) ノーベル賞に山中伸弥氏(10月) 衆院選で自公政権返り咲き(12月)

【総合】

①「聞く力」阿川佐和子

②「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子

③「新・人間革命 (24)」池田大作

④「体脂肪計タニタの社員食堂 続・体脂肪計タニタの社員食堂」タニタ

⑤「舟を編む」三浦しをん

【単行本 文芸書】

①「舟を編む」三浦しをん

②「2 謎解きはディナーのあとで 謎解きはディナーのあとで(2)」東川篤哉

③「恋物語」西尾維新

④「共喰い」田中慎弥

⑤「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野圭吾

 東日本大震災の翌年、復興は始まったばかりで、まだ手の付いていないことも多い時期でした。稼働中の原発が定期検査入りで一時ゼロになり、電力不安も続いていました。一方で、東京スカイツリー開業、iPS細胞の山中さんのノーベル生理学、医学賞など明るいニュースも。

 大震災を経て多くの人が嚙みしめたのは、ごく当たり前の「日常」というものの幸せ、そして他者への思いやりや「共感」だったと思います。ベストセラー総合の1、2位のタイトルがそんな空気に合っていると思うのはうがち過ぎでしょうか。

 総合5位、文芸書トップの「舟を編む」は、レビューを書いているのでよろしければご一読ください。

 

 2011年(平成23年

主な出来事 八百長疑惑で大相撲春場所中止決定(2月) 東日本大震災、原発事故(3月) なでしこジャパンがサッカーW杯優勝(7月)大阪府知事、市長選で大阪維新の会圧勝(11月)

【総合】

①「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉

②「体脂肪計タニタの社員食堂 500kcalのまんぷく定食」タニタ

③「続・体脂肪計タニタの社員食堂 もっとおいしい500kcalのまんぷく定食 」タニタ

④「心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣」長谷部誠

⑤「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカー の『マネジメント』を読んだら 」岩崎夏海

【単行本 文芸書】

①「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉

②「KAGEROU」齋藤智裕

③「くじけないで 」柴田トヨ

④「謎解きはディナーのあとで(2)」東川篤哉

⑤「百歳」柴田トヨ

 文芸書3、5位は詩集「くじけないで 」と「百歳」。「百歳」は柴田さんの100歳を記念した詩集ですが、そもそも詩集が2冊もベストセラーに顔を出すこと自体珍しいですね。NHKが柴田さんの詩を支えにする大震災の被災者を番組にし、もう一冊の詩集「くじけないで 」は、翌2012年にかけてベストセラーになりました。

 そうそう、あのころダイエットがらみでタニタが大ブームになりました。総合5位のもしドラ「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカー の『マネジメント』を読んだら 」が、どうして文芸書にランクインしていないのでしょう。

 不思議に思って調べると、何とここに掲載していない【単行本 ビジネス】部門の1位になっていました。あれって、ビジネス書だっけ?。ちなみに、もしドラは私が初めて買った電子書籍でした。

 (ベストセラーはTOHAN調べ)