ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

手首から外し、川に投げ捨てたものは 〜「午前三時のルースター」垣根涼介

 最初に読んだ「光秀の定理」が面白かったので、次も読むとすれば定評のある作品の前に、まずはデビュー作。「午前三時のルースター」(垣根涼介、文春文庫)は、読者を引っ張るストーリーのテンポと結末に、小説家としての大きな資質を感じました。シンプルに言えば、読ませます!

 サントリーミステリー大賞と読者賞のダブル受賞作。デビュー作らしい荒さはありますが、車へのこだわりなどわたし好みの記述もあってグッド(ここは極私的感想)です。

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 ベトナムで失踪した父を探す少年の成長物語。黒幕が見えないサイゴンの裏社会からの妨害にあいながら、2人の日本人と現地のタクシー運転手、娼婦が、少年を助けて共に捜索に加わります。

 小説を読みなれた人なら、途中からある程度は結末が推測できてしまうかもしれませんが、しっかり読ませてくれるので、たとえ予想通りでもがっかり感はありません。

 ちなみに、タイトルにある「ルースター」とは夜明けを告げる一番鶏。少年にとって大人への厳しい夜明けと、未来への勇気を告げて一番鶏は鳴きます。

 この小説が出たのは20年前なんですね。個人的には仕事に忙殺され、ごく一部の文学作品を除いて、ノンフィクションばかり読んでいた時期でした。もし当時から注目していたら、その後の作品をリアルタイムで楽しめたかと思うと、少し残念です。一人でも多くの作家さんの成長を追うのは、読む側の楽しみの一つですから。

 この稿を今読んでいるあなたがまだ若いなら、ぜひこれと思った作家の新作にこれからも注目してください。何年ではなく、20年、30年後まで。そこにはもう一つの読書の楽しみがあるはずだから。と、要らぬ年寄りのお節介、すいませんw。

 

 さて、なんと103歳のおばあちゃん(知人の御母堂)が一気に2冊の本を出そうとしています。初めての本で、歌集と自叙伝。そのお手伝いをさせてもらっているため、当分、読書に費やせる時間に限りがあるため、ブログ更新がやや滞るかもしれません。

 ごくわずかで、だから大切な読者の皆さんに、一応のおことわりです。

 死ぬまでに本を出したい、後はわざわざ自分の葬式に参列してくださった方に本をさし上げたい、という103歳の願いを知ってしまうと、わたしも頑張るしかありません。時には午前三時のルースターを聞いても、自分に鞭打つことにします。