ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

初めてのバラ一輪 そして紫式部など 〜「源氏物語」瀬戸内寂聴訳その3

  昨年の今ごろ、庭のツルバラを剪定したとき、元気な枝を1本、小さな鉢に挿しました。

 雨風が当たらないよう、鉢は部屋に入れて窓際に置きました。根が出たようで、秋には枝から芽が。 

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 4月に大きな鉢に植え替えて外に出し、蕾が付き、日々膨らむのを楽しみにして水と、肥料は控えめに与えてきました。

 そしてほぼ1年後の今日、伸びた先に、初めての花が開きました。コクテール(またはカクテル)という品種です。バラにしてはあっさり、可憐な風情がお気に入りです。

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 もう少し育ったらベランダ横に移し、柱に枝を誘引する予定です。

 すっかり大きくなって満開を楽しませてくれるのは2、3年後からかな。また一つ、植物の世話が増えるのですが...。

 さて、バラのゆっくりした成長と足並みを合わせて、これまたゆっくり読み進めている瀬戸内寂聴訳「源氏物語」に、なんとも面白い現象が定着しました。

 瀬戸内さんの現代語訳をとことん楽しむために、岩波古典文学体系の原文および校註が手放せず、ほぼ併読状態です。普通は原文に挑戦して、現代語訳を参考にすると思うのですが、全く逆の様相になりました。

 光源氏の正妻・葵上が、六条御息所の生き霊に憑かれてついに亡くなりました。ここに至る直接の過程がまた、とても千年前の物語とは思えない精緻さ。どちらの女性も、本意ではない行動の結果に車争いが起き、悲劇へと進んでいく。

 そして葵上における、生(出産)と死の対比。六条御息所の苦悩。同じ男として、なんとも形容し難い光源氏という存在。

 現代小説やテレビドラマなど<かわいいお話>に思えてしまう男と女のどろどろです。紫式部の手腕は、すごいなあ。

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 40数年ぶりの再読なのですが、あのころは文章の意味を追いかけることにエネルギーを費やして、細部に目が届いていなかったと痛感しています。

 54帖読み終えるまで、あとどれだけの昼と夜、そしてビールと焼酎を費やすことになるのかー。

 

 ところで、紫式部という日本原産の落葉低木があります。花言葉は「上品」「知性」。

f:id:ap14jt56:20210613215314p:plain (紫式部)