「劇場型」とも言われた小泉政権が9月に終わったこの年、日本は一つの曲がり角だったのかもしれません。総人口がいよいよ減少に転じたことが明らかになり、いじめの自殺が各地で相次ぎました。ライブドア事件、村上ファンド事件も記憶に新しいところです。IT、企業買収などいかにも現代的な経済舞台での出来事でした。
「国家の品格」がベストセラーになり、「品格」はこの年の新語・流行語大賞になりました。「××の品格」と題した本も相次いで出ましたね。
2006年(平成18年)
主な出来事 東京地検がライブドア強制捜査(1月) トリノ五輪で荒川静香金、イナバウワーが流行語に(2月) 安倍政権=第1次=発足(9月) 2005年の国勢調査がまとまり日本の人口が減少に転じたことが判明
【総合】
①「国家の品格」 藤原正彦
②「ハリー・ポッターと謎のプリンス」 J.K.ローリング 松岡佑子 訳
③「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー
④「えんぴつで奥の細道」 大迫閑歩 書 伊藤 洋 監修
⑤「病気にならない生き方」 新谷弘実
【単行本 文芸書】
①「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー
②「陰日向に咲く」 劇団ひとり
③「恋空 切ナイ恋物語 (上・下) 」 美嘉
④「容疑者Xの献身」 東野圭吾
⑤「天使がくれたもの」 Chaco
「国家の品格」は読みやすい文体で、日本の伝統文化、美意識、類を見ないその素晴らしさを認識しようと述べた1冊です。欧米の合理主義に対して、日本文化の独自性と素晴らしさを訴える主張はそれまでもありましたが、「品格」という視点で分かりやすく直裁に、自立することを説いた内容が広く受け入れられたのだと思います。その後、なんにでも品格がついて苦笑いしたのを思い出します。
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」は、この年でしたか。書店に平積みされていたのを思い出します。結局、買わなかったんですが。タイトルと、カタカナの著者名に何となく臆してしまい...。
部門に上げてありませんが、【新書・ノンフィクション部門】5位に「下流社会 新たな階層集団の出現」(三浦展、光文社)がランクされています。「1億総中流」といわれたバブル期から移り変わり、下流社会という言葉が認知されたということですね。NHKが「老後破産」を制作し、本にもしたのはこの数年後。子どもの夢が「正社員」だと話題になったのも、このころだったでしょうか。