ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

ゆっくり逝こうぜ(タイトル借用です)

 今日から3月に入り、いろいろと身辺に区切りがつきました。

 一つは新聞のコラム。週1本といえども疲れが溜まり、早々に引退したいと以前から告げてありました。長く在籍した会社からのオファーなので執筆を引き受けたものの、3年目に入ったころから息切れが続いていました。

 すぐ降板というわけにはいきませんが、6月いっぱいと決まりました。残り4か月。終わりが見えるなら、もう少し頑張れそうです。

 次にTさんの自伝のお手伝い。本文原稿は本人と何回も確認し合い、すでに印刷会社に渡って作業は峠を超えています。「あとがき」が残っていました。今日の打ち合わせで、3日にその原稿が手元に届くことになり、このブラッシュアップが終われば、いよいよ本の体裁に組んだゲラ原稿の最終校正を残すのみ。

 Tさん、85歳。30数年前に倒産寸前の子会社・零細企業を押し付けられ、未知だったIT分野への参入を決断し「いつかは株式上場する会社にしてみせる」と、執念で経営に没頭しました。そして昨年、親会社を出し抜いて東京証券取引所の審査を通過、ジャスダックに新規上場するまでに育てました。そのとき、代表取締役会長で84歳。

 文章の巧拙はさておき、父母の思い出から始まり、夢に向かう一途で誠実な人柄が、横書き罫線紙にびっしり手書きした文章(IT関連企業のトップなんですがボールペン原稿^^;)から伝わってきました。

 この手の自伝、一般的には有名人でない限り全く関心を引きません。本人もそこはよく分かっていて、本は書店に並ぶことのない私家版(プライベート・エディション)。読んでもらいたいのは、子供と孫だとか。お手伝いをした自分にとっては、一人の人間の一生を読み込んで追体験できた仕事でした。

 出版不況、電子本全盛(特にコミック)の時代ですが、昔ながらの本を支える表に出ない底辺はこうして残っています。

 作業の間、わたしがプライベートなエネルギーと時間を費すものとして、最も欲したのは、読書ではなく絵を描くことでした。

 難しいことは一切考えない、細筆を使った手作業が何とも自分を支えてくれるのです。思い出せば一昨年秋、くーを亡くしたときもそうでした。

 鳥の巣を描き始めたのは、昨年11月上旬。最初はこんな具合でした。

f:id:ap14jt56:20220301203226j:plain 11月9日

 今年の正月明けは、ここまで前進。

f:id:ap14jt56:20220301203410j:plain 1月4日

 そして3月に入った今日です。

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 現在は下塗りを進めている最中で、まずは一通り描き終わることが目標です。登山に例えるなら、ベースキャンプ設営中というところ。

 これが終わったらまた最初から、全体に仕上げの色と明暗を描き加えるつもりです。そしていよいよ最後の頂上アタックは、鳥の羽根。そこにまで行けるのはいつなのか。楽しみだけれど、ゴールは遠いぞ...。

 使っているのはほぼ3本の細筆のみ。画材屋さんには置いてないプラモデル彩色用の筆を、油絵の道具にしています。写真ではよく分かりませんがこの3本、微妙に太さが違う^^;。

 油絵用に比べ、極めて軽いから使いやすい。半面、柔なのでヘタリが早く、そのくせ1本が安くない(最悪かも)。こんなので描いているから、なかなか先に進めませんw。

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 弥生3月。ブログの友人の俳句や読書を楽しみ、古本を愛し、写真や車や温泉やゲームが好きで、わたしと同じように日々の暮らしにけっこう疲れもするみなさま。お互いに頑張りましょう、なんて。

 実は描きかけの絵、死ぬまでに仕上がればいいし、仕上がる前にあの世に行ったとしても、それはそれでいいか...くらいの気持ちがあります。

 「ゆっくり逝こうぜ」という、わたしと同年代の男性のナイスなタイトルのブログがあります。日々の雑記なのですが、男らしいこだわりに満ちていて、おまけにサブタイトルは「おやじの恋快適化計画」。う〜ん、オトコの世界^^。しばしばお邪魔して、楽しませてもらっています。

 近いか遠いのか分からないその日まで、自分もゆっくり逝きたいなあ。