ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

あかりをつけましょぼんぼりに

 あかりをつけましょぼんぼりに…と、今日は桃の節句。高齢者二人世帯のわが家にも、お雛様が飾ってあります。高校を卒業して大阪の大学に行き、今は2人の子の母になって東京に暮らす、娘の雛飾りです。お雛様を見ながら老人が思うのは、

 光陰矢のごとし。

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 この雛飾り、オルゴールが付属していて、ネジを回すとメロディーが流れます。あかりをつけましょぼんぼりに…と、妙にオルゴールの音色が馴染むのです。

 意外に知られていないのは正式な曲名で、サトウハチロー作詞、河村光陽作曲の「うれしいひなまつり」。調べてみると、昭和11年にレコードが出て、愛唱されるようになったそう。文化庁などが選定した日本の歌百選にも入っています。

 童謡でありながら、もの悲しいとされる短調の曲。そのせいか、雛まつりの華やかさを歌いつつ、しっとりとした日本情緒が漂ってきます。また一説によると歌詞は、若くして結核でこの世を去った姉への思いを、サトウハチローが託したのだとか。

 

 うちもそうですが、最近は圧倒的に「お内裏様とお雛様」だけの二人飾りが多いようです。歌詞に出てくる「五人ばやし」や「官女」は、現代のひな飾りからは消えつつあるのですね。

 それどころか、ミッキーマウスとミニーが主役を務めたり、トランスジェンダーを反映して男性同士、女性同士の二人飾りまであると知ったら、あの世の作詞者は驚くに違いないでしょう。

 静かに焼酎に酔う、令和4年の早春。