ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

「1本!」赤か白か 本は楽しい 〜「武士道セブンティーン」&「エイティーン」誉田哲也

 前稿で、大岡信さんの「詩の日本語」について難渋しながら読了と書きましたが、併読していたのが「武士道セブンティーン」「武士道エイティーン」(誉田哲也、文藝春秋)の2冊です。

 シリーズ1作目の「武士道シックスティーン」が面白かったので、ヤフオクで上記2冊を落札。1冊200円でした。で、実はてっきり文庫本だと思って落札したのです。ところが届いたのは単行本。表紙デザインが同じで、思い違いをしていました。

 ちょっと得した気分になったのは本に赤と白、2本のしおり紐が付いているのに気づいたときでした。

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 こういう遊び心、いいなあ。このシリーズ、剣道にかける女子高生の青春小説なので、しおり紐はそこにかけてあるわけです。審判は紅白の旗を持ち、「面」とか「胴」とか、1本が決まったときにどちらかの旗を上げます。作品の中にはそんな場面が何度も出てきます。

 最近は出版社も経費節減で、しおり紐のない新刊は珍しくないだけに、なんだかこれだけで豪勢に思えてしまう。

 ところでこの2本のしおり紐、実はほとんど出番がありませんでした。どちらの本も、一気読みだったからです。「一気読み」というのは、小説についての最高の賛辞だと思います。だからこれ以上書くことはなし!。

 ではあんまりなので、よろしければ先日書いた「武士道シックスティーン」の稿をお読みください。シリーズの面白さについてはそこに書いたつもりで、2作目3作目についても基本は変わりません。
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 一冊の本とは、例えば一杯のグラスワイン。作品本体はワイン。味が深かったり、フルーティーだったり、また味わうこちらの状態次第で、様々な容貌を見せてくれます。作品が収められている本自体は、ワイングラスですね。こちらもいろいろなグラスがあります。グラス選びも、楽しみの一つです。

 中身さえよければ入れ物は何でもいいという考え方があり、それは確かに正しい。でも、ワインとグラスがマッチして味わいを増すこともあります。そんな「文化」は、やはり捨てがたい。

 オンライン読書やタブレットで読む電子書籍が、便利だけど味気ないのは、中身だけでそこに「本の文化」が欠けているからだと思います。