ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

<断捨離>を試みた<真逆>の結果について

 <断捨離>は、比較的新しい言葉ですが、あらゆる年代の人にすっかり定着した感があります。

 <真逆=まぎゃく=>という新語も、20年ほど前から若い世代を中心に使われ続けているようです。実はこの言いよう、わたしのような「気持ちだけ若い」人間には、いささか抵抗感があります。白を「真っ白」、新しいが「真新しい」と同じ「真」による強調の語法なのに、なぜこれが引っかかるのか自分でも不思議です。

 <断捨離>に戻れば、わたしはかなりの自信があります。日常生活で、捨てるのは苦手ではない。ただし、本という唯一の例外があり、これがなかなか曲者なのです。おかげで年々狭まっていく物理的と言うか、3次元のと言うか、とにもかくにもリアルな居住空間。

 意を決して、300冊ほど処分すべく、あくせくビニール紐でくくりました。これで少しは空きができるだろうと期待しながら。

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 ところが、空間を獲得するためにあちこちひっくり返した結果、いったいどこが広がったのか?。終わってみれば、むしろ混沌が深まった感があって<真逆>の結末。「やれやれ。」(昔の村上春樹ふう)です。

 わたしの大先輩が「断捨離とは、モノと心を捨てることだ」と喝破しておられました。確かに、モノに託した過去の思いを断ち切るところが、この行為の本質なのですね。そしてある年代からの断捨離は、密かな「心の終活」なのかもしれません。

 カオス極まる深夜の部屋で一人、肉体疲労に腰痛まで加わり、そんな想念を駆け巡らせています。

 はあ。

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