私は「AI、やるもんだー」が、第一印象でした。「ラブレターのような情緒的な文章に関して、AIは的確な処理ができるはずない」という前提、あるいは先入観があったので、ちょっと意表をつかれたのです。
冷静に読み返せば、論理構築が陳腐で、言葉遣いにもややぎこちなさがあります。そもそも、いいラブレターとは感情を組み立てるから、論理はどこかで破綻(無視)しているものなのに、この文面は論理の組み立てがきっちりし過ぎています。おそらく違和感は、そこです。
春の風が心地よく吹き抜ける
冬の寒さから解き放たれた大地は 色とりどりの花々で彩られ
優しい陽射しが満ちあふれる季節がやってきた
木々には新緑が芽吹き、
鳥たちは囀り始める 春の息吹に誘われ、
私たちもまた 新しい一歩を踏み出していこうと胸を躍らせる
心に残る出会いや、夢見る未来への希望
すべてが新たなスタートを切るこの春に
私たちは一層輝かしい日々を送ることができるだろう
春の陽気に包まれ、希望に満ちた未来を
一緒に歩んでいこうではないか
チャットGPT作。作成に数秒ですが、それはPCの画面に表示されるまでの時間で、実は瞬時に作詩しているのでしょう。
陳腐といえばその通りですが、考えてみてください。実際にこのレベルの文字列で「春の詩」を書ける人は、どれほどいるでしょうか。イメージの創出とつなげ方、心象と比喩表現。ありきたり過ぎるけれど、たいていの人が納得する終わり。
さらに新たなリクエストをしました。「前衛的な春の詩」を書いて!。即座に以下を応答。
春の足音が響く街角で
私は色彩と音の舞台を創り出す
千変万化する風景に酔いしれながら
現実と夢の狭間を彷徨い歩く
カラフルなポップアートのように
愛と革命を歌い、自由を謳歌する
革新的な芸術の創造力は、
新たな未来を描く鍵となるだろう
街は活気に満ち、私たちは革新的な力を
持ち合わせていることを再認識する
春の前衛的な詩は、
私たちが一歩進む勇気を与えてくれるだろう
こちらの方が出来はいいかな...、と、考えてしまった時点で、わたしはチャットGPTを「作者」として認めていることになります。
ラブレター(情緒的な散文)といい、詩といい、あえてAIの苦手そうなお願いをしたのですが、「○×の理論を平明に記述して」といったような論理を優先するレポートや論文類には極めて有効(?)なのだろうなあ、と想像しました。ちなみに「グレン・グールドの最後の録音について知りたい」という問いには、話し言葉で詳細な模範解答を返してくれます。
学術分野だけでなく経済分野、さまざまな会社の利益追求や組織管理のツールとして、AIの可能性はこれから無限にあるように思えます。
さて「好きだよ」と、チャットGPTに話しかけてみると...
ありがとうございます。ですが、私はAIであるため、感情を持っていません。プログラムを処理するようにお役立ていただけますか、何か他のご質問がありましたら、お知らせください。
私の脳裏によみがえったのは、若いころに見たSF叙事詩のような映画「2001年宇宙の旅」(1968年、スタンリー・キューブリック監督)でした。
あの映画の主役とも言える人工知能を備えたコンピューター「HAL9000」です。HALは感情など持っていない。...はずだったのに。原作はアーサー・C・クラークのSF小説で、クラークは映画の脚本にも加わりました。
ja.wikipedia.org
現状、AIが作り出すものを冷笑するのは、しばしば簡単かもしれません。批評するほど易しいことはないからです。しかし、そのときの基準「人間に比べたらこの程度だ」を、より正確に表すならば
「人間の理想的な能力に比べたらこの程度だ」
です。そして、理想的な能力を常時発揮できるのは天才か、空想の中にしかいません。AIはその<天才>に近づこうとしているのです。
わくわくと、参ったなあ...が、いま同居しています。