ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

夢幻の如くなり 〜「戦の国」冲方丁

織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼。戦国時代を生きた6人の武将の生き様の、1断面を切り取った連作短編集が「戦の国」(冲方丁、講談社文庫)です。 冒頭に置かれた「覇舞踊(はぶよう)」は、信長を描いた作品。1560年、桶狭間…

伝えたい言葉となって舞い散ろう 〜「岸辺に」池田瑛子

戦争、災害、犯罪被害。いかにその悲しみに寄り添うか、見知らぬ人びとの痛みを、自分の痛みとして分かち合えるか。 そうした悲しみや痛みは、自ら求めることなく否応なく外からなだれ込んでくるものでしょう。なだれ込んできたものに心を埋め尽くされた人が…

異常が<日常>になった世界

気温35度を越える猛暑は当たり前で、40度に迫る日も珍しくありません。打ち水?。そんな風流を楽しんでいたら命の危機です。外出にマスクは必需品で、しんどいなあ。そんな8月も下旬に入り、「暑さもあとしばらく」と安心できないのが近年の気候変動です。 …

謎に迫る ミステリーのような面白さ 〜「日本語の成立」大野晋

こんな想像を巡らせたことはありませんか。もし自分が卑弥呼の時代にタイムスリップしたら、どれくらい会話が通じるのだろう?。あるいは、縄文時代のある集落にだったら。そこではどんな日本語<ヤマトコトバ>が話されていて、例えば英語なんかよりはスム…

「1本!」赤か白か 本は楽しい 〜「武士道セブンティーン」&「エイティーン」誉田哲也

前稿で、大岡信さんの「詩の日本語」について難渋しながら読了と書きましたが、併読していたのが「武士道セブンティーン」「武士道エイティーン」(誉田哲也、文藝春秋)の2冊です。 シリーズ1作目の「武士道シックスティーン」が面白かったので、ヤフオクで…

日本人の心の歴史 〜「詩の日本語」大岡信

「日本語の世界11 詩の日本語」(大岡信、中央公論社・昭和55年)は、奈良時代の万葉集から明治の正岡子規まで、詩に使われた日本語を通して、日本人の美意識の変遷を浮き彫りにする試みです。 さすがに速読は無理で、2週間ほどかけて読了に漕ぎ着けました。…

お盆 あの世とこの世の通路について 〜雑文

うだる猛暑日から一転、今日は天気がぐずつきました。本の文字が読み辛くなり、ふと気づけば明かりが必要なたそがれどき。「あれ、もう...」と思ったのは、曇り空に加え、お盆が近づいて日没時間が早まっているからでしょう。 雨上がりに一斉に鳴き始めたセ…

斬るか斬られるか ん、女子高生が? 〜「武士道シックスティーン」誉田哲也

ただ相手を斬ることしか、今は考えていません。勝ち負け、でもなく、ただ斬るか、斬られるか....それが剣の道だと思っています。 これ、16歳の女子高生が剣道部顧問の先生に吐くセリフです。彼女がボロボロになるまで読み続けているのが新免武蔵(別名という…