ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

ブログ開設3年の節目に

ふと気づけば5月23日、このブログを始めてちょうど3周年の日になりました。 組織の肩書きから離れて3年、ブログを通じて思いもしなかった方々に出会え、コメントまでいただくことを幸せに思います。みなさん、ありがとうございます。 今年も庭のサクランボが…

国を持てなかった大地と人びと 〜「物語 ウクライナの歴史」黒川祐次

ロシアによるウクライナ軍事侵攻が起きなければ、手にすることはなかったであろう1冊が「物語 ウクライナの歴史」(黒川祐次、中公新書)です。とてもいい勉強になりました。読みながらつい、このころ日本はどんな時代だったかと、いちいち並置してしまうの…

「はあ」..「やれやれ」とその後 〜村上春樹&映画「ドライブ・マイ・カー」

少し前のことになりますが、アカデミー賞を獲得して話題になった映画「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督、西島秀俊主演)を観に行ったのは、4月下旬の大型連休前の平日でした。話題の映画だったにもかかわらず空席が目立ったのは新型コロナのせいか、2…

春のぶらぶら、「螢川」散歩

今日は朝からウオーキングシューズを履き、車で4週間に1度通っている循環器内科へ。過労で発症した不整脈の持病があって、ここ10年近く薬が欠かせません。たぶん死ぬまで。 診療後、街中の有料駐車場に車を入れ、川べりの散歩に出かけました。 私が通う医院…

さはありとも、あやしや 〜「虫愛づる姫君」など、堤中納言物語

「不潔なおじさん」を筆頭に、とかく女性に不人気な生き物はいろいろ思い浮かびますが、木々の緑が深まるにつれて最近元気になり、這い回ったり、飛んだりする一部の虫たちも嫌われ者の部類でしょう。そもそも「害虫」という言葉はよく耳にしますが、反対語…

生き抜くために今はただ敵を.. 〜「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬

今年の本屋大賞はちょっと肌触りが違うようだ...と、受賞作紹介文で思い、本屋さんではタイトルとカバーイラストにやや尻込みしたけれど、やっぱり買うことにして、読み始めれば「うん、悪くない」と何度もにんまりしたのが「同志少女よ、敵を撃て」(逢坂冬…

楽しく諧謔に満ちたお話はいかが? 〜「お伽草子」太宰治

日本の昔話、説話に材を取った「お伽草子」(太宰治、新潮文庫)が書かれたのは、昭和20(1945)年3月から7月にかけて、米軍による空襲が激しくなった時期です。太宰も疎開先の家を焼夷弾に焼かれ、書き上げたばかりの原稿を抱えて炎から逃げたりしました。…