ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

言葉の論理 感性の論理 〜「石原吉郎全詩集」(花神社、1976年)

「詩」とは、どんな表現形式なのでしょう。そもそも「詩」というものを、どのように定義すればいいのでしょうか。 散文に対して、韻文があります。しかし韻律に則った言葉のつながりだけが詩かというと、そうではありません。極端な話、散文詩もあるわけです…

日常生活の裂け目 現れるものは 〜「木曜日の子ども」重松清

書店に行くと、新人や未読作家になかなか手を出せない自分がいて、理由は幾つかあります。がっかりするか、がっかりはしないまでも、「次の作品も」と思えない経験をたくさんし過ぎたから。とにかく何でもがつがつ読みたい、若々しいエネルギーを失ったとい…

人としての傷、の痛み 〜「凍結捜査」堂場瞬一

犯罪は、人の「負の真理」の発露です。犯罪を追いかけるとは、だれもが持つ、あるいは状況次第で持つかも知れない陰の貌を明るみに出していくことです。一方で犯罪には被害者がいて、殺人事件などは当人や家族にとってどんな理屈でも埋めることのできない不…

文芸書が熱くなってきた 〜2019.7.23週間ランキング

「もっとざんねんないきもの事典」が2週間ぶりにトップを奪回し、「希望の糸」とのせめぎ合いが続いています。4位の「夏の騎士」百田尚樹 さん、9位 「てんげんつう」 畠中恵さん、そして 10位の「さよならの儀式」 宮部みゆきさんは初のベスト10入りです。 …

本屋さんへのレクイエム

仕事や個人的な旅行で、けっこう日本のあちこちを訪れました。旅先でぽっかり空いた時間が出来たとき、楽しみなのが、当てもなく街中を歩き回ることです。スマホで美味しい店とか安い飲み屋とか、観光スポットを探すわけでもなく、ただぶらぶら。 賑やかな街…

松方コレクション 美の運命は 〜「美しき愚か者たちのタブロー」原田マハ

上野の国立西洋美術館に足を運んだことがある人は、たくさんいらっしゃるでしょう。収蔵作品の中核が、松方コレクションと呼ばれる個人の所有物だったと知っている人も。「美しき愚か者たちのタブロー」(原田マハ、文藝春秋)は、そのコレクションの成り立…

トップに「希望の糸」、3冊が新たにランクイン 〜2019.7.17 週間ランキング

先週4位に登場した「希望の糸」がトップに躍り出ました。売り文句の一部を拝借すれば、「令和」初の東野圭吾さんの新作書き下ろしミステリーです。東野さんは息の長いベストセラー作家ですね。一時期、東野さんはけっこう読んだのですが、安定した力量を認め…