ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

京都・大原の早春

2月がまもなく終わる寒い日、朝から車で高速道路を走りました。行き先は京都の山里、大原。かわり映えしない日常を、変えてくれるのは小さな旅です。京都は何度か訪れたことがあっても、大原とその周辺は未踏の地でした。 現役引退し、差し迫った仕事に縛ら…

新しい絵に着手

遠くに暮らす孫娘を小品に描き始めました。 いまはざっくりした下絵の途中。気が向いたときに、これから少しずつ進めるつもりです。細部を描きこむ前なので、まだあまり女の子らしくないかなw。でも最初のざっくりで、この子の中身をつかみたい、なんて。 第…

ぼくは二十歳だった。それがひとの... 〜ポール・二ザン「アデン アラビア」のことなど

昨夜、麦のお湯割りをちびちびやりながら、武者小路実篤について書きました。小説「愛と死」の読後感を綴ったのですが、投稿を公開してから、やおら立ち上がり、踏み台に乗ってごそごそ。確かこのあたりにあったはず...と、書架の一番上の奥からポール・二ザ…

純愛小説の古典 〜「愛と死」武者小路実篤

わたしが子どものころ住んでいたぼろ家の、居間兼座敷に1枚の色紙が掛けてありました。本物ではなく、安っぽい複製品です。子どもながらにも達筆とは思えない毛筆で、こう書かれていました。 「この道より我を生かす道なし この道を歩く 武者小路実篤」 色紙…

降臨するのは神か悪魔か 〜「生成AIで世界はこう変わる」今井翔太

2022年秋にChatGTPが現れたことは、個人的にインパクトのある出来事でした。ちょっと試してみようと、ChatGTPにアクセスして詩やラブレターの代筆をリクエスト。そして生成AI(クリエイティブな人工知能)が創造した<作品>に、少なからず驚きと驚異を感じ…

晴れ着と油彩画

絵の額装は、手塩にかけて育てた子に、晴れ着を着せるような気持ちになります。 子の出来の良し悪しは横に置いて、こんな色合いが似合うだろうか、デザインはどんなのがいいか、できれば安く...。というわけで晴れ着、ではなく油彩額を昨年末からネットで物…

今宵、古老の話に耳を傾けませんか 〜「忘れられた日本人」宮本常一

文学作品を評するのであれば秀作、あるいは傑作という言葉があります。しかし「忘れられた日本人」(宮本常一、岩波文庫)は、フィールドワークに徹した民俗学の仕事。最初の1ページから惹き込まれ、読み終えて、これは紛れもない名著だと思いました。 昭和1…