ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

古い本に味わいあり 〜「白描」ほか 石川淳選集第2巻

同級生が先日、フェイスブックでこんなコメントをわたしによこしました。 「ほぼ現役を終えた年代である今は、お互いにやり残したことを潰していくときにしたい」 元公務員の彼は、少子高齢化でさびれ続ける地域を活性化しようと、地元で活動する若い演劇人…

心の豪遊はできる はず

10月に入るとさすがに、朝晩は半袖で寒くなりました。ちょっと気分転換しようかと、このブログ記事のカテゴリー分けを一部整理。サイドバーに「日日雑記」「掌編」の2カテゴリーを新設して、これまでごった煮だった書評以外の投稿をまとめました。 「日日雑…

赤トンボの季節 全集物は別巻が面白い? 〜「日本の詩歌」別巻 日本歌唱集

夕やけ小やけの あかとんぼ 負(お)われて見たのは いつの日か ダイエットが気になり始めた数年前から、わたしの趣味の一つになったのが田舎道のウオーキングです。歩くのは数キロから10数キロまで、様々なマイコースがいつの間にかできました。そして車で…

愛しき親友の植物たち

このブログを始めたとき、自己紹介に「本と車と酒とガーデニングが好きな昔人間です」と書きましたが、これまで本以外についてほとんど投稿してきませんでした。秋を迎え、小さな、緑のいのちが部屋に芽吹いてきたので少しだけガーデニングの報告を。興味の…

日本史年表と小説 大河の一滴 〜「絶海にあらず」北方謙三

気づけば秋分の日を過ぎ、日没がずいぶん早くなりました。秋の夜長とはよく言ったもので、隣の部屋のテレビから聞こえてくるローカルニュースを聞き流しながら、窓からの夜風に深呼吸。昼に読み終えた本を思い起こし、日本史の年表をめくったりしています。 …

凛として健気 そして傷だらけにうるうる 〜「少年と犬」馳星周

そもそも直近の直木賞受賞作について、こんな偏った言い方はあまり適切でないのですが...「なにせ犬好きにはたまらない小説です!」。犬に興味がない人にも、たぶん...。 いやわたし、ネコに限るという人の気持ちを推しはかることはできないので、断定はでき…

淡々と語られる孤独 密かにシュール 〜「首里の馬」高山羽根子

2020年上半期の芥川賞は受賞2作で、どちらを読むか迷って選んだのが「首里の馬」(高山羽根子、新潮社)でした。たまたま高山さんと地縁によるつながりがあるという、深い説得力に欠ける単純明快な理由です^^;。 単行本で150ページ余りなので、わりとさ…