ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

手首から外し、川に投げ捨てたものは 〜「午前三時のルースター」垣根涼介

最初に読んだ「光秀の定理」が面白かったので、次も読むとすれば定評のある作品の前に、まずはデビュー作。「午前三時のルースター」(垣根涼介、文春文庫)は、読者を引っ張るストーリーのテンポと結末に、小説家としての大きな資質を感じました。シンプル…

一期は夢よ ただ狂へ 〜「光秀の定理」垣根涼介

「光秀の定理」(垣根涼介、角川文庫)を読みながら、ひさびさに小説というものを満喫しました。個性豊かな人物たちの造形と展開は見事で、しばしば味わい深い。わたしは垣根さんは初読でしたが、最後のページを閉じて思わず「これは、これは...」と、心の中…

雨を聴く 深い癒しのとき 〜「日日是好日」(にちにち これ こうじつ)森下典子

書店に行くたびに目にし、気になりながら、なかなかレジまで持って行かない本。チェックリストのようなものですが、最終的に読むことなく忘れていく1冊もあれば、何か小さなきっかけで買う本もあります。 「 日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ…

昔見た映画が玉突きして...

先日、たまたまフェリーニの「道」の旋律を耳にし、無性にピエロがほしくなって夜中に中古品の糸操りをネットで購入、本日わが家にやってきました。天井からぶら下がって、部屋の一角を自分のスペースにしています。 人形収集の趣味はありません。モノクロの…

4位に「こども六法」 いのちを守るために 〜月間ベストセラー2020年1月期

2020年に入り、最初の月間べストセラーになる1月期を、トーハンが発表しました。「こども六法」が4位に入り、根強い人気です。後述しますが、子供と父母にずっと読まれ続けてほしい本です。「鬼滅の刃」そして「田中みな実 1st 写真集」が、12月に続いて1月…

本能寺 張り巡らされた謀殺計画 〜「信長の革命と光秀の正義」安部龍太郎

2020年のNHK大河は明智光秀が主人公ということで、書店にも光秀関連本を集めたコーナーができています。信長が光秀に討たれた本能寺の変は、日本の歴史を大きく変えた事件でした。なぜ光秀は主君・信長を急襲したのか。現代に至るまでいろいろ言われてきた大…

おじいちゃんに大人気 その秘密は? 〜「ささやく河」藤沢周平

知人に、図書館司書の女性・Sさんがいます。 「藤沢周平とか60代後半以降のおじいちゃんたちに、すごい人気なんだよねー。時代小説って、なんであんなに借りいくんだろ」 と首をかしげるのです。なんとなく理由を説明できる気もするのですが、短く端的な言葉…