ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

湊かなえさん「落日」がランクイン 〜2019.9.10 週間ランキング

4位に湊かなえさんの「落日」が入ってきました。文芸書は、4週間ぶりのベスト10入りです。「おしりたんてい ラッキーキャットは だれの て に!」が相変わらずの強さでトップを譲りません。2位の「大家さんと僕 これから」も、7月末からずっと売れ続けている…

人はどこにかえるのか 〜「山中静夫氏の尊厳死」南木佳士

流し読みできない作品、読み始めて思わず背筋を伸ばす作品というものがあり、わたしにとって「山中静夫氏の尊厳死」(南木佳士、文春文庫)は、そんな1冊でした。南木(なぎ)さんは「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞を受賞。「医学生」「阿弥陀堂だよ…

ロマンとリアルの対峙 〜「三島由紀夫と司馬遼太郎」松本健一

特定の作家を取り上げ、批評して1冊にすると、自ずから読者をかなり限定してしまいます。「三島由紀夫と司馬遼太郎」(松本健一、新潮選書)で言うなら、三島や司馬の読者でない人がこの本を開こうとするだろうか...と考え、しかしまた、はたと自分の考えを…

9月、読書の秋到来....なのですが 〜2019.9.3 週間ランキング

気づけば9月、旧暦なら「長月」です。今年の中秋の名月は9月13日。中秋の名月は旧暦8月15日の月を指し、これを愛でる習慣は平安時代に中国から伝わったそうです。ちなみに天文学的な満月は、翌14日になるとか。 秋の到来です。読書の秋はもちろんですが、新…

本を愛した5人の男 〜「古本屋奇人伝」青木正美

書物、雑誌、新聞と、出版物を取り巻く環境は1990年代半ば以降、劇的に変化し続けています。「紙の活字文化」という視点でまとめるなら、「衰退」という2文字があらゆる数字から浮かび上がります。衰退する世界の、日々印刷されて店頭に並ぶまでがメーンスト…

年に1度の逢瀬 幻の3日間 〜「風の盆恋歌」高橋治

9月1日から3昼夜続く、富山市・八尾の「おわら風の盆」が始まりました。指先1本1本まで芯が通って乱れない、踊りの美しさ。胡弓と三味線が鳴らす、緩やかで切ない地方(じかた)の調べ。歌い手が息長く、高い声で歌い上げる正調おわら。 おわらの歌詞はたく…

東アジアの外交戦略 昔のことですが.. 〜「新版 古代天皇の誕生」(吉村武彦)

4日かけて、昔習った日本史のおさらいをしていました。歴史に詳しい方には今さらと笑われそうですが、日本から中国の都・洛陽にまで使者が行き、後漢の光武帝からあの有名な金印「漢委奴国王」(漢の委わの奴なの国王)を授かったのは、西暦57年でした。これ…