ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

日日是好日を目指して

久しぶりの雨。ぱらぱらと、止むことなく雨音が耳に入ってきます。緑が一気に鮮やかさを増し、紫陽花の季節がやってきました。 また季節はめぐりきて うすむらさきのほほえみはよみがえる ...と始まる、失恋の詩(金井直「あじさい」)があります。高校生の…

三島由紀夫ではなくバラ 〜しかも売れ残り処分品の

バラ、薔薇。華やかな花の代表格でしょうか。結婚式場だけでなく、小説、詩などさまざまな文学作品にも登場します。 「薔薇刑」という三島由紀夫の裸体を被写体にした、細江英公の写真集もありました。鍛え抜かれた男の筋肉。カメラを睨む三島の眼。 三島の…

ぼくらは冷酷に生き抜く 〜「悪童日記」アゴタ・クリストフ

読み始めるとまず、感情を排した簡潔な記述に引き込まれます。フランス語からの翻訳で読むわけですが、原文が持つ雰囲気と存在感が(おそらく)ストレートに伝わります。目の前の現実を映し出すことに徹し、感情の揺らぎによる曖昧さや、形容詞で飾ることを…

自分探しのベースキャンプ 〜「『日本』とは何か 日本の歴史00」網野善彦 講談社

自分を探す18歳 みんなが自分を探す81歳 以前、SNSで見つけて思わす破顔した標語(?)です。80を過ぎてしっかりした高齢者はたくさんいらっしゃいますから、けしからん!と言えばその通りなのですが、18歳より81歳によほど近い自分としては、もう少し長生き…

娑婆に戻る

ふう...娑婆に戻れる。 娑婆(しゃば)と書いて、もしかすると若い人は首を傾げるのでは...。ふと不安になりました。もともとは「この世」を指す仏教用語ですが、昔のやくざ映画では刑務所から出所したときの、お決まりの台詞によく使われていました。 娑婆…