有名画家の作品を模写する。面白いかも、勉強になりそう...と思っていましたが、これまでやったことがありませんでした。
油絵の模写は大変そうで敬遠する気持ちは今も変わりませんが、下絵のデッサンならやってみたい。となると、わたしには挑戦したいカルトン(油彩の下絵にするデッサン)がありました。
500年以上前のルネッサンス期に描かれた原画は、紙に木炭と白チュークを使ってあります。わたしはスケッチブックの画用紙に4B、2B、Hの鉛筆3本と消しゴムで挑戦。
春から少しづつ模写してきて、とりあえず完成しました。「とりあえず」というのは、まだ加筆することがあるかもしれないから。
こんな模写になりました。

原画はレオナルド・ダ・ヴィンチの「聖母子と聖アンナと幼い洗礼者聖ヨハネ」、または「バーリントン・ハウス・カルトン」とも呼ばれています。ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
わたしが模写したのは絵の一部、聖母マリアとアンナの頭部のみです。カルトンはほぼ等身大の大きさで描かれた大作で、単なる下絵とは思えない迫力があります。残念ながら下絵は下絵のまま、キャンバスの油彩は描かれませんでした。

ごく一部の模写でさえ、昔から見慣れた作品についての新しい気づきがたくさんありました。
まず、陰影のタッチの精細さに驚嘆しました。ただ見るのと、模写するのは大違いでした。
「モナリザ」をはじめとした作品で、レオナルドは「スフマート」という技法を駆使しました。この技法を生み出したのが、そもそもレオナルド。具体的には画布の上で絵の具を筆ではなく指で刷り込むように延ばし、隣接する色との境界をぼかして絶妙なグラデーションを生み出す技法です。
そのため「モナリザ」には、レオナルドの指紋が残っているとさえ言われます。本当かどうか知りませんがw。
スフマートは油彩、つまり油絵のテクニックですが、木炭と白チョークの下絵段階からしっかりスフマートで描かれています。これを鉛筆で模写を試みる過程は、とても勉強になりました。そしてこの技法はレオナルドという天才の、感性の表出そのものだと感じました。
もう一つだけ。微笑です。「モナリザの微笑」はモナリザだけでなく、模写したマリアとアンナ、そのほかのレオナルド作品にも共通する<気品>があります。こうした唇の表情からも、天才の心のうちが漂ってくるようでした。

