ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

悠久なる文化継承 パクリか本歌取りか 〜マネの名作から

 さいきん超有名な絵画について、ちょっとした発見があったので話の(記事の?)ネタにしてみます。「そんなん知ってたよ〜」という美術史の専門家の方、笑って許してください。

 まずは絵を1枚ご覧ください。

 19世紀半ばに、フランスのエドワール・マネが描いた油絵「草上の昼食」です。作品が発表されたとき、怒涛の如き非難を浴びました。いろいろな非難はあったのでしょうが、AIに頼らずわたしの頭脳で要約すると

 「生身の女の裸を描くなんてけしからん!」

 となります。この女性は娼婦で、作品の設定が猥雑で公序良俗に反するわけです。ところがいま、「草上の昼食」は<近代絵画の出発点>とされる名作になっています。

 わたしの頭に浮かぶ素直な疑問。え、そもそも当時、なんで非難したの?。裸婦は15世紀に始まったルネッサンス以降、たくさん描かれてきたじゃないか。わたしが実物を見た範囲であげるなら、たとえばこんなのとか

 

 (「キューピッドの教育」コレッジオ、1525年ごろ、ロンドン・ナショナルギャラリー)

 むしろこちらの方がエロくない?。これはまだ大人しい範疇だけど。

 なぜマネが非難を浴びたか種明かしをすると、「草上の昼食」以前の裸婦はすべてヴィーナスや三美神その他、ギリシャ神話の女神やニンフだったのです。神話に仮託して裸婦を描くのは許されても、人間の女性を裸にして現実世界を再現することはNG。その代わり女神ならどれだけエロスが漂っても、美しければ許されました。

 なんだか戯けた綺麗事だなあ〜と思うけれど、キリスト教社会と道徳が刻んできた歴史です。まあ日本でも、裸婦彫刻を小学生に見せるとき、校長の指示で腰巻きを彫刻に巻いたという、嘘か真か分からないハナシがありますけど。

 さて、今回の本題はここからです。

 わたしが敬愛するルネッサンス最盛期(16世紀前半)の天才、ラファエロがとある絵を描き、残念ながら本物は散逸したけれど、別の人が模写した作品は残っています。

 37歳で死んでしまったラファエロのほぼ同時代、没後まもないころ?の模写版画です。右下部分を拡大すると

 あれ。分かりやすいよう、マネの名作を再掲。

 構図、しっかりパクってるじゃん。

 たぶん...短歌の世界なら有名な歌を踏まえて自作を作る「本歌取り」という手法が許されているように、これも同じで、盗作問題には発展しないのでしょう。そもそもこの手の例は他にありすぎるのかも。オリジナルは著作権切れ?だろうし。

 この場合、ラファエロのオリジナル自体、当時発掘された古代彫刻のレリーフ(浮き彫り)を元にした作品なので、構図の本来の著作権者はギリシャローマ時代の無名の彫刻家ということになります。

 美術において、3人の人物を配置した一つの構図が古代、ルネッサンス、近代と時代を超えて生き続けています。その系譜は現代日本までつながっていて、村上春樹さんの新潮文庫のカバー。絵師はフジモトマサルさん。


 さて。そろそろお後がよろしいようで^^;。