ロンドンの街中の本屋さんを何軒か訪ねたとき、意外だったのは日本人作家の英訳小説がけっこう並んでいることでした。「へえ〜」そうなんだ、とそのとき思い。村上春樹さんだけでなく、あまり売れそうにない純文学系の作品がいろいろあったのです。
ただし別格は漫画「Manga」で、こちらは「ONE PIECE」はじめ人気シリーズが堂々とコーナーを持って書店の一角を占めています。一冊手にして開いてみると、吹き出しはすべて英語。当たり前なんですけどね。
今年、そのイギリスで日本人として初めて英国推理作家協会賞(翻訳部門)を受賞したのが「ババヤガの夜」(王谷晶、河出文庫)です。

読み始めるとノンストップでした。キャラクターの造形、ストーリー展開、暴力シーンの描き方など、くっきり角が立っていてテンポよく、どこか漫画っぽい。念のため、「漫画っぽい」は肯定的な意味です。世界が認める、現代日本のサブカルチャーに通じる力を感じました。
主人公は武闘派女子。めっぽう喧嘩に強い、どころか傷だらけの超人レベル。ヤクザの下っ端を痛めつけたことから、親分の娘のボディーガードをすることになってしまうのですが、そこからヤクザ社会のごたごたに巻き込まれます。
無垢なものを見たら守る。男を叩きのめす武闘派女子は、気づけばそのために突っ走ってしまいます。女性作家ながら、暴力シーンの描き方はかなりのインパクト(失礼、これも性に関する差別発言?)。
結末に至る展開と、武闘派女子がいかに生まれたかというエピソードはやや乱暴に感じました。一方、Mangaカルチャーの文脈であれば、見事な飛躍と展開なのだと思います。うーん...。
でも、面白かった。
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