ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

2025年四季の絵日誌、ようやく夏に

 ずいぶん秋らしくなりました。昨年より1週間遅れでキンモクセイが咲き始め、香りが漂ってきます。そろそろ夜の焼酎もロックかお湯わりか迷う。この悩ましさも、わたしの例年の風物詩?かな。

 2025年の年明け、花盛りだったのはサザンカでした。うちの庭には赤と白の2種類があります。赤花の枝先を切ってガラスコップに入れ、リビングの一隅の点景にしました。なんとなく心惹かれ、油彩の小品にすることに。

 空いた時間に一か月余りかけて描き終わると、次に白を描きたくなりました。紅白の対にしないと、なんだか<冬>が終わらない気がして。花季の長い花とはいえ、2月はそろそろ終わりに近い。まだ残っている花を選んで切り、またコップへ。

 幸い、色違いの2作目なので割とすんなり描き終えました。

 

 「山茶花」 ジェッソ(下地)、油彩

 

 4月、庭のサクラが満開になりました。ソメイヨシノの苗木を植えて30数年、けっこうな大木になって毎年楽しませてくれます。ただ今年は、満開と荒天が重なったのです。

 暴風と雨に終夜見舞われた翌朝、花を付けたまま折れた枝先が、庭にいくつか散らばっていました。ひと枝拾い上げて家に戻り、キッチンにあった空き瓶に挿しました。「のりのに」のラベルがある海苔の甘煮、分かりやすく言えば白いご飯に乗せる<えどむらさき>地元バージョン商品の瓶です。

 するとキッチンに、ぽっと小さな灯りがともったようでした。

 夕刻、カーテンの合間から射した西陽がキッチンのサクラを照らしました。それを目にしてふと思ったのです。

 「あ、これを絵にしたい」

 色より、しっかりデッサンして鉛筆の濃淡を主役にしよう。色彩を入れてもごく淡い脇役にして。どうなるか勝算はないけれど...。実際に描き始めたのは5月の連休明けでした。そして、

 

 「春の譜」 パネル、ジェッソ(下地)、鉛筆、透明水彩、油彩 

 小さな絵に、半年近くかかってしまいました。光と背景の空気に悪戦苦闘して手間取り。途中、思ったのが「2025年の四季を各1枚の絵にして残そう」というということでした。夏はなににするか、サクラを描きながら、使いたい色だけはもう決めていました。

 「黄色」だと。サザンカもサクラも、隠し味のように黄色を使っていたので、夏はこの色を主役にしたかったのです。ただ、サクラに一区切りついたのは10月に入ってから。ようやく、夏が始まりました。

 

 夏の黄色といえばヒマワリだろうけれど、わたしには派手すぎてどうにも描く気になれません。ゴッホにはなれないし。で、7月にスーパーで買ったトウモロコシです。さすがに、うちの庭にトウモロコシは植えてなかったのでスーパーの食品売り場産。どの絵も、ありふれた庶民の日常を切り取ったモチーフです。

 モデルの実物はとっくに塩茹でしていただきました。うん、美味しかった〜。今は写真を見て描いていて、鉛筆ではなく油絵の具の色を主役に進めます。

 さて次、最後の<秋>はなにを描くかもう決まっているけれど、その前に<夏>のトウモロコシが仕上がるのはいつになるだろう。わたしの2025年は年を跨ぐことになりそうです。