ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

食い道楽 日の丸お粥に中華そば 〜食の記憶・file4

 ふと、ある食べ物が思い浮かび、無性に食べたくなる...こと、ありませんか?

 若いころは洋食に中華、和食、創作料理、B級グルメまで、いろいろ情報を見て食べくなったものです。思い浮かべるだけで、口にじわっと唾がたまる感じ。体が、食物を求めていたのだと思います。

 けれど、年齢とともにそんなことは少なくなった。だから、なにかを食べたいという欲求自体、じじいになった今はけっこう新鮮です。

 昨夜。炊飯器の残り飯を見ているうち、無性に朝のお粥を食したくなりました。冷蔵庫にある、塩が効いて酸っぱい自家製梅干をのせて。かみさんにその旨を告げ(=わたしの朝食は準備しなくていいと伝える必要がある)、珍しくわくわくして寝床に入りました。

 朝、小鍋にお湯を沸かして冷飯を入れ、数分煮立てるだけ。隠し味?はひとつまみの塩。家で「あれを食べたい」と思ったとき、お粥でも自分で作ります。理由は単純。お米の柔らかさなど、自分の細かいニーズは自分にしか分からないから。もしかするとわたし、面倒臭い人間なのかもw。

 「あれを食べたい」と思い立って厨房に入っても、簡単な料理さえ満足できる味が出せず、落胆することは多々あります。しかし、今朝のお粥はひっそりうまかった。で、写真まで載っけたりして。酸っぱそうで、唾出てきませんか?

 

 朝食、これだけ?。

 はい。食後にコーヒー飲んだけど。

 栄養バランスは?

 いやいや、朝から無粋な問いかけはなしにしましょう。質素。これが今朝のマイブームだったのです。そしてお米は、縄文時代の後半から日本人のDNAに刻み込まれた、ど真ん中直球の食い物なのだから。

 

 昼は外食。車を1時間近く走らせて、県境のさびれた街の外れに生き残る昭和の遺跡?「春乃色食堂」へ。

 ここは麺類、丼各種、名物のおでんなどあります。テーブルにメニュー表はなく、お客は壁に貼ってある短冊を見て注文します。

 ラーメン...ではなく、この店では「中華そば」。昨今の物価高で値上げしたようで、値段のところだけ重ね貼りした紙が白く、黒い極太マジックペンで「580円」。税込価格とか面倒なことは書いてない。とにかく客が払うのは580円。レシートなんてもらえません。現金手渡しのみ。

 超懐かしい味だとか、絶品だとか、持ち上げるつもりはありません。昨今話題のラーメンにあるようなインパクトは皆無。ただ、すっきり薄味なのでスープまで飲み干したくなり、胃に重さが残らない。 

 久しぶりに、贅沢な1日でした。ごちそうさま。