ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

くーの兄弟犬、ピースのお話

 一昨年11月に逝ったうちの愛犬・くーには、ピースという兄弟犬がいました。

 くーはイエローでしたが、ピースはブラックのラブラドールでした。よくブラッシングしてもらっていたのでしょう、見事に艶のある黒。3世代が暮らす広い屋敷に飼われていました。

 ピースの寝床は廊下の一角。とある深夜のことです。

 突然、ピースが悲鳴のような声を発し、激しく吠え始めました。そこに被さるおじいちゃんの「わ!!」という叫び。

 家族全員がびっくりして目を覚まし、廊下に集まってみると、尻餅をついているおじいちゃん。悲しそうになくピース。おじいちゃんは家族全員を見回して、一喝。

 「真っ暗な家の中で、こんな真っ黒な犬を飼いやがって!」

 トイレに行こうとしてピースを踏んづけてしまったのです。幸い、おじいちゃんにもピースにも怪我はありませんでした。

 誤解がないよう付け加えておけば、おじいちゃんもピースが大好き。ピースはそれから13年生き、くーよりひと足早くあの世に旅立ちました。

 ピースが冷たくなった夜、家族はいつものように皿にドッグフードを盛り、陰膳で偲んだということです。

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 黙々とキャンバスに色を置いていると、いろいろなことが思い浮かびます。ご紹介した闇夜の黒犬、ピースのエピソードもその一つ。

 黒色を生かすとき、黒一色に塗りこめては何にもなりません。黒に限らず白や、他のどんな色も同じ。一つの色は単独では死んでいて、背後や周辺の色との対比によって初めて命が宿ります。

 そして背後の色によって黒が命を得たとき、背後の色もまた黒によって生き始めます。

 色は面白くて、難しいなあ。この色はどうしたら生きてくれるのか...なんて思いながら、筆先に絵の少し具をとり、息を止めて(ぶれを抑えたいから)彩色。使っているのは油彩筆ではなくて、プラモデルに水彩塗料を塗るときに使う極細です。

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 今朝は午前3時に目が覚めてしまい、朝食まで仕事。午前中も仕事して、あとは休みにすると決め、お絵描きでリフレッシュしました。

 久しぶりに、ピースやくーのことなど思い出しながら。